米国戦“初勝利”の背景にあるもの=日本女子代表 1−0 米国女子代表
ゴール前での迫力があまり感じられなかった米国
後半も米国は、単発的な攻撃ながら、さすがと思わせる運動能力の高さを見せた。しかし、ゴール前での迫力はW杯ほどではない。ボールにかかわろうとする選手が、明らかに少なすぎた。例えば後半36分、熊谷の背後のスペースに走り込んだルルー(後半28分にワンバックと交代)がセンタリングを折り返したシーンでは、ゴール前に走り込む選手が1人もいなかった。これがW杯や五輪本番であれば、2〜3人がペナルティーエリア内に突進してくるところだ。米国相手に失点ゼロで抑えたなでしこジャパンだったが、相手の攻撃に迫力が欠けていたことは留意すべきだろう。
その後、高瀬にゴールを決められると、やっと米国は本気を出す。かさにかかって攻め込んだが、残り時間が短すぎた。ロスタイム3分が経過して、タイムアップの笛が鳴る。1−0。なでしこジャパンはついに、FIFA(国際サッカー連盟)ランキング1位の米国を、史上初めて90分以内で破った。
日米両国のデッドヒートはこれからも続く
試合後、宮間は胸をなで下しながらそう語った。しかし同時に、気持ちを引き締めることも忘れなかった。
「今日の米国はコンディションが良くなかったと思います。W杯の米国を知っているだけに、勝ったからといって手放しでは喜べません。五輪の金メダルまでは、まだ先が長いと思いますね」
最後に、試合終了直後のピッチの様子について、ぜひとも触れておきたい。
右半分では、米国が緊急ミーティングを行っていた。そして左半分では、なでしこジャパンがボールを蹴って練習を行っていた。いずれも出番がなかったり、出場時間が短かった選手たちだ。
もっとうまくなるために。もっと強くなるために。
互いにリスペクトし合える良きライバルとなった日米両国は、この日の試合を糧(かて)に、さらに成長しようとする意欲に満ちている。4週間後の4月1日、仙台で再び顔を合わせる時には、どちらがどれだけ進歩した姿を見せられるだろうか。そして8月のロンドン五輪では、どんな魅力的な戦いを演じてくれるだろうか。
時代をリードする両国によるデッドヒートは、この先まだまだ面白くなりそうだ。
<了>