戦力充実のオリックス、“岡田野球”完成へ

悔しさから始まる今季のチーム「1球の重みを忘れたらアカン」

T−岡田(左)と李大浩。ふたりの主砲がチームを引っ張る 【オリックス野球クラブ株式会社】

「新・黄金時代」
 2012年のオリックス・バファローズのチームスローガンである。去年のそれと、何ら変わり映えのしない文言ではあるが、この短いフレーズの中から、球団が示す並々ならぬ決意と自信が見えてくる。2011年のスローガン、「新・黄金時代へ」と見比べてほしい。今年のものとの違いにお気付きだろうか? そう、「へ」がないのである。つまり、黄金時代へ向かうことを主眼に置いたものから、黄金時代を迎えるチームの覚悟を表現するものへと変わったのである。

 勝率わずか1毛差でクライマックスシリーズ進出を逃した昨シーズンの経験が今年のチームのベースになっている。オリックスの指揮官として3年目を迎える岡田彰布監督は言う。「最終戦で勝てずに、次のステージに進めなかったのは事実や。でも、その前に勝てる試合は、いくつもあったということよ。あと、1勝とかよく言われたけど、あのピンチを抑えていたら、あのチャンスを生かしていれば、ということばかりが浮かんでくるよな。ボール球を振らずに、しっかりフォアボールを選んでいれば、勝てた試合もあったはず。1勝というより1球の大切さが身に染みたシーズンやった。1球の重みを忘れたらアカン」

ライバル球団の戦力流出 岡田監督が評価した補強

 シーズンインを直前に控え、オリックスの評価はすこぶる高い。近年にはない評判の良さである。パ・リーグの他球団との戦力比較によるところが大きいようだ。昨年、日本の頂点を極めたソフトバンクからは、主戦の3投手と川崎宗則が抜けた。また、国内で敵なし状態にあった日本ハムのエース・ダルビッシュ有は活躍の場をアメリカに求めた。ここ数年、継続的にリーグ上位で覇権を争った2チームの戦力ダウンを考慮すれば、おのずと、戦力を蓄えてきたオリックスに目が行くということなのだろう。

 確かに、戦力の流失がほとんどなかったチームは、昨季の経験を糧に、精神面で一歩の前進、一段の進化を遂げている。岡田イズムの浸透もあって、3年前の“30もの借金”にまみれた暗い面影はとうに消えている。周囲の評価をともかく、オリックスにとって今季が大きなチャンスであることは確かではある。他チームとの力関係から見えてきたアドバンテージ。これを生かさない手はない。

 そして、このオフもオリックスは積極的に動いた。弱点、課題を克服するために、岡田監督の意向をくむ形で、フロントも大きくチームをサポートした。「昨年の弱みは、攻撃力やろ。取れるところで点が取れんかった。だから、4番を打てる選手が欲しかった。あとは、強みであるブルペン陣に、厚みを持たせたかった。平野(佳寿)、岸田(護)は不動にしても、そこにたどり着く前のあとひとりのリリーフや。そういう意味では、良い補強をしてもらえたよ」
 勝利にどん欲な指揮官も、球団の攻めの“投資”に謝意を示す。そう、オリックスのリーグ内での優位性は、ほかとの比較だけから成り立つものではない。オリックスが持つ、戦力の絶対値を見逃すわけにはいかないのだ。

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