戦力充実のオリックス、“岡田野球”完成へ

韓国の三冠王がもたらす力「T−岡田と良い競争ができたら」

“4番候補”として順調な調整を続ける李大浩 【オリックス野球クラブ株式会社】

 194センチ、130キロ。数字から推測する体格よりも実際に見た李大浩のそれは、ケタ外れに大きい。ただ、大柄な選手にありがちな鈍重さや堅さはどこにも見当たらない。韓国球界で2度の三冠王に輝いたスラッガーは。北京五輪やWBCといった国際的な大舞台を経験し、その都度、存在感を十分に示してきた。
 では、日本球界ではどうか? 当然の疑問である。日本人打者のメジャーリーグでの評価と同様に、韓国人野手のこの国での成功にはいささか懐疑的な見方があるのも事実である。しかしながら、以前から隣国のスラッガーに注目していた岡田監督は、キャンプ初日の動きを見て即座に、“4番・李大浩”を公言した。「期待していた通りよ。とにかくバッティングが柔らかいし、バットがしっかり内側から出ている。逆方向にも良い打球が打てるということ。打率も残せるよ」と、決定力不足に泣いた昨年の“穴”は、李大浩で埋まると確信したようだ。

 では、いきなり“4番の座”を確約された李大浩の反応はどうだろう。「4番? それはまだ分からない。T−岡田というホームランバッターもいるわけで、彼と良い競争ができたらいいと思うよ。4番を争うライバルというよりも、2人が打てば、チームの得点力が上がるわけだから……。ところで、オリックスはいつもこんなに練習するのかい? 去年、スンヨプさんも、この練習をこなしていたのか(笑)」と、自分の置かれた立場を理解しながらも、日本野球への順応に懸命であり、その成果は、キャンプや実戦を通じて確実に表れていると言っていいだろう。大陸東岸の半島から渡ってきたスラッガーが、この国で巻き起こすであろうブームが、オリックス躍進の原動力であることは間違いない。

磐石のリリーフ陣に加わった強力なワンピース

新加入のミンチェ。経験豊富なベテランが強力リリーフ陣に加わった 【オリックス野球クラブ株式会社】

 岡田監督の野球哲学の底流となる“守りの野球”を支えるのは、平野、岸田の“勝利の方程式”。今季は三元一次の方程式にパワーアップしたのである。ミンチェの加入だ。日本で12年の経験を持つベテランは、台湾からの成功者であり、西武では常に、重要な役割を果たし続けてきた。昨年は、ゲーム終盤のセットアップを任されたミンチェは、チームのCS進出に大きく貢献した。ともすれば7回からの“回またぎ”の登板を余儀なくされた平野にとって、ミンチェの存在は、強い追い風となりそうだ。
 チームを勝ち星に導く方程式が、相手にとって難解なものになればなるほど、オリックス勝利の確率は格段に高まるはず。分厚くなったオリックスのブルペン陣、相手の反撃意欲をかき消すには十分な陣容がそろったと言っていいだろう。

 開幕を目前に控えた今、誰もが霧で見えない向かう先に、黄金の大陸の存在を信じようとしている時期である。期待と不安の交錯。それら両者のバランスから、チームの現状が顕現するわけだが、今季のオリックスの行く末を予見したならば、『期待>不安』という不等式が当てはまるのだ。岡田監督就任から3度目のシーズンは、チーム強化計画の総仕上げ。岡田オリックスの完成形が見られそうだ。

 幾度抱けど、そのたびに霧散した黄金時代という夢。それが叶うとするならば、今シーズンということか……。高まる期待と可能性。その二つが等号で結ばれる時が来た。機は熟したのである。

<了>

<text by 大前一樹>

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