ベガルタ仙台の特別な1年、感謝の気持ちを忘れない=ユアスタにあふれた感謝の数々

小林健志

特別な意味を持った試合前、ハーフタイムでのイベント

選手だけではない。サポーターをはじめ、今季のユアスタにはたくさんの「感謝」の思いがあふれた。その気持ちを今後も大切にしてほしい 【写真:アフロ】

 試合前やハーフタイムのイベントでアーティストなどが演奏を行い、スタジアムを盛り上げることはよくあるが、今年のベガルタのイベントは意味合いが異なっていた。

 4月29日に行われたホーム開幕戦の浦和レッズ戦では、試合前に陸上自衛隊による吹奏楽演奏が行われ、陸上自衛隊による復興活動の模様が大型ビジョンに流された。陸上自衛隊の真摯(しんし)な活動を知っているサポーターからは大きな拍手が送られた。懸命に復興にあたる人々への感謝の思いがあふれた光景だった。

 5月3日のアビスパ福岡戦では試合前に仙台市立八軒中学校合唱部・吹奏楽部の演奏があった。八軒中学合唱部・吹奏楽部は震災前コンクール出場を控えていたが、震災の影響で辞退を余儀なくされ、発表の場を失った。この八軒中学合唱部・吹奏楽部にぜひ発表の場を、ということで試合前の演奏が実現した。中学生の素晴らしい演奏は、まさに感謝の思いが込められたもので、ユアスタは感動に包まれた。

 また、この日は仙台市で毎年5月に行われていた「仙台・青葉まつり」で踊られる「すずめ踊り」の披露があった。今年は「仙台・青葉まつり」も中止となったため、発表の場を失った方々に、ユアスタで存分に踊ってもらった。感謝のすずめ踊りで、スタジアムは大いに盛り上がった。すずめ踊りは、その後も何度か機会があり、最終節の神戸戦でも披露された。

 多くのアーティストが被災地を盛り上げようと駆け付けてくれたことも記しておこう。ベガルタサポーターは氣志團の「スウィンギン・ニッポン」を元歌に「スウィンギン・センダイ」という応援歌を歌っており、震災後は「スタンディング・センダイ」として歌っていた。これに感動した氣志團はまず、「スタンディング・センダイ」を逆カバーして歌った映像をYouTubeに公開。さらに7月2日の名古屋グランパス戦のハーフタイムに特別ライブを行った。氣志團、サポーターそれぞれの感謝が結集し、ユアスタは異様な熱気に包まれた。

 そして同じベガルタ仙台サポーターが勝利時に歌う応援歌「AURA」の元歌「愛・オーランド」を歌うロックバンド、AURAが7月31日の柏レイソル戦前に特別ライブを行った。こちらも大いに盛り上がり、ユアスタを沸かせた。

 こうした試合前やハーフタイムのイベントをひとつ取っても、今年は特別な意味が込められており、温かい感謝の気持ちに包まれる時間となったのだ。

忘れてはいけない感謝の気持ち

 そのほかにも各クラブ、そしてサポーターから多くの支援を受け、今年のユアスタはいつになくエール交換が多かった。サッカーは相手があって初めて成り立つもの。ベガルタにかかわるすべての人にとって、こうした感謝がより強く感じられたシーズンだったのではないだろうか。この感謝の気持ちを今後も絶対に忘れてはいけない。

 ベガルタは来年2月にタイで行われる「トヨタプレミアカップ」に出場することになった。タイが洪水被害に遭ったこともあり、チームは試合のみならず、ボランティア活動も行う予定だという。ベガルタにとっては、これまで受けた多くの人たちからの支援を、別の形で返していくという活動も必要になるだろう。

 今後もベガルタがさらに強いチームに成長し、被災地の「希望の光」であり続けることを望んでいるが、個人的にはそれ以上に期待したいことがある。いつまでもユアスタが感謝の気持ちに溢れた、素晴らしい雰囲気のスタジアムになるよう、率先して感謝の気持ちを表すことができるクラブであってほしい。心からそう願っている。

<了>

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著者プロフィール

1976年、静岡県静岡市清水区生まれ。大学進学で宮城県仙台市に引っ越したのがきっかけでベガルタ仙台と出会い、2006年よりフリーライターとして活動。各種媒体でベガルタ仙台についての情報発信をするほか、育成年代の取材も精力的に行っている

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