FC東京、意識改革が導いたJ1昇格=まさかの降格から1年、再び最高の舞台へ
自分たちで考え、自分たちで判断する
J2での厳しい戦いの中で、選手たちはタフさと修正力を身につけていった 【Getty Images】
徳永は昨年までと比較して「試合中に自分たちで考えて修正できるようになった」と言っている。
「前から行くのか、ブロックを組んで引くのか。ボランチが、中盤が下がって(パスを)受けに来る。後ろは足りているから、前へのサポートに行くとか。相手を見ながら、そこはある程度判断できるようになってきたと思います」
去年は全然なかったという、自己判断での修正。昨年それができなかった一因は、城福浩前監督の提示するコンセプトに頼りすぎていたことにもある。教科書が徹底しているだけに、そこから外れたときに自分たちで対処するすべを持たなかった。今年は選手に任せられる比重が大きい。考える余地があるぶん、対応力が身についた。
たくましく対応する習慣を身につけなければならなかった外的要因もある。権田修一は「J2では対戦相手が東京のためだけにやり方を変えてくる」と言う。
「J2って侮れるチームがないんですよ。いきなりフォーメーションを変えてくるかもしれない。だから今年はすごく勉強になっている1年だなと思います」
キックオフ後の観察から自主的な判断が要求される。4−4−2を想定して対策を練っていた湘南は、いざ始まってみれば3−4−3だった。鳥取も、当日になって急に5−4−1に変えてきた。しかし椋原が「ここ2カ月は相手が変えてこようとも、動揺しなくなりましたけどね」と言うとおり、東京はびくともしないタフさを身につけた。
オークマ・ベイブスがさらに羽ばたくには
「それも今年、大熊さんからチームが学んだことではあると思います。天皇杯のFC KAGOSHIMA戦も(相手が格下だからとターンオーバーせずに)メンバーを変えなかったじゃないですか。勝っていたらメンバーを変えない。そういうところはチームとして監督から得られたものかなと思います」
闘魂注入。1試合ごとに集中する大熊イズム。ターンオーバーせずにいつでもベストメンバー。控えの選手には気の毒だが、それを貫いた。大熊監督の言う不変=普遍のもの。球際の強さ、ハードワーク、精神力。大熊監督は10月後半の5連戦も「選手は疲れているだろうがそれでもやれるように、この1年やってきた」と言い、ターンオーバーはしなかった。
若い田邉草民には理不尽なほど怒鳴り続けた。それでも田邉は「それを聞いてむかっとするのは自分のプレーがよくないとき」と受け入れた。戦術以前の本質が、大熊監督のげきによって鍛えられた。
“オークマ・ベイブス”がさらに羽ばたくには、今野が今年言い続けてきた東京独自のスタイルを獲得することが必須となる。本質を鍛えられたからこその、戦術の上積み。権田は言う。
「昇格が決まっても、このままのテンションで最後までやり切ることが大事」
大熊監督が言うように、FC東京はようやくスタートラインに立ったばかりだ。まだJ1のレベルでは何も成し遂げていない。さらに飛躍するための舞台が来季に待っている。
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