レンジャーズなどがダルビッシュへの興味示す=GM会議の舞台裏
驚くことが多かったGM会議
GM会議でダルビッシュ(写真)に複数の球団が興味を持っていることがはっきりした 【写真は共同】
今回は雰囲気が一変して、1893年に開業したというウィスコンシン州ミルウォーキーの古いホテルが会場。一日の大半を過ごすロビーの天井は高いものの、昼間でも薄暗く、どこか重々しい。外のいてつく寒さを考えたら、息抜きに空気を吸いにいくのもためらわれ、時間が長く感じられた。
地元出身、バド・セリグコミッショナーの息がかかっているとか、かかっていないとか。ミルウォーキーに遠征するチームは、ここに宿泊することになっているそうだ。
このホテルには、広く知られたうわさがある。幽霊が出るというのだ。2009年には『AP通信』が大まじめに報じ、このとき、このホテルに宿泊していたツインズのカルロス・ゴメス(現ブルワーズ)は、まず、部屋で不思議な声を聞き、そのあと、シャワーから出てiPodがおかしくなっているのを見て、バスタオル1枚でフロントへ駆け込んだそうである。
今回の会議でも、びっくりすることが結構あった。幽霊ではないけれど。
レッドソックスの新GMは質問攻めに
こなれたベテランGMは、記者らに囲まれても、「今、チェックインしたばかりだ。部屋に荷物を置いたら戻ってくる」などと言ってエレベーターの中に消えるが、そのあとで戻ってくるケースはまれ。
対照的に、キャリアの浅い若いGMは囲まれたときの逃げる術を知らない。「いや、ちょっと……」と言い訳を探しているうちに質問を浴びせられ、そのまま答えざるを得ない状況に追い込まれる。
新しくレッドソックスのGMになったベン・チェリントンなど、あっという間にボストンのベテラン記者らに囲まれ、「新監督探しはどうなってる?」と一斉に聞かれてしどろもどろ。冗談っぽい質問にも笑み一つ返せず、余裕がなかった。
レンジャーズGM補佐はしゃべりすぎた?
レンジャーズは、シーズン中にジョン・ダニエルズGMが、自ら日本へ足を運ぶなど、ダルビッシュ獲得に熱心。ただ、ダニエルズは子どもが生まれたばかりで、今回のGM会議を欠席し、サド・レバインGM補佐が代わりを務めることになっていた。
そのことはすでに伝わっていたので、彼が入ってくると、日本人メディアはフロントの近くで待機し、チェックインを終えたところで距離を詰めた。
このとき、レバインGM補佐は、一瞬驚いたような表情を見せたものの、やがて、頬を緩める。「えっ、俺でいいの?」といううれしそうな顔になった。
それですっかり、ガードまで緩んだか。気分良く話しているうち、ダルビッシュに興味があるようだが……と聞かれて、「ああ、隠すことじゃない」とあっさり認めてしまったのだ。
(言っちゃったよ……。)今度は、こっちが驚いた。例え興味があっても、「まだ、ポスティングもされていない選手にコメントすることはできない」と逃げればいい。彼が来る前、他チームのGMはことごとくそう交わした。
こっちは、それでもいい。そのときの表情や口ぶりから、何となく興味の度合いが想像できるからだ。しかしレバインGM補佐は、「うちの投手力を、その存在で高めてくれる投手は2人ぐらいしかいない。彼はその1人だ」とさらに踏み込んだ発言。ありがたいが、聞いていてだんだん不安になった。
(アシスタントGMがここまで言っちゃっていいんだろうか?)おそらくチームから、「ここまでは、メディアに話していい」とうレクチャーを受けているはずだが、その後のやり取りで、「オーナーの金銭的なサポートもある」とも口にし、ポスティングされたら、入札に参加する――と実質的に明言しまったのだから、他の日本人メディアも唖然(あぜん)としていた。