レンジャーズなどがダルビッシュへの興味示す=GM会議の舞台裏

丹羽政善

オ軍GMは次々と情報渡す「入札は多分するよ」

オリオールズGMはFAの松井(写真)を「指名打者の候補」と語った 【Getty Images】

 ただ、上には上がいる。 翌15日は午前からGM会議が行われ、午後4時45分から1時間ほど、取材時間が設けられた。テーブルも椅子もない広い部屋にメディアと各チームのGMが集うフリーセッションだ。

 このとき、ブルージェイズのアレックス・アンソパウロスGMのように、ある程度入札をうかがわせる人もいたが、せいぜい、そこまで。

 しかし、取材時間も終わりに近づいたころ、4、5人の日本人メディアに囲まれていたオリオールズのダン・デュケットGMが、誰かが投げた「ダルビッシュがポスティングされたら入札しますか?」というど真ん中のストレートをこう打ち返した。
「Yeah,it will be.」(多分、するよ)

(ええっ!?)前日、レンジャーズのアシスタントGMもそこまでは言わなかったが、これはもう、宣言そのもの。思わず、そこにいた顔見知りの日本人記者と顔を見合わせた。
 その後もデュケットGMは、「松井(秀喜)は、指名打者の候補だ」と無表情で言ったり、「中島(裕之・西武)は、セカンドでいいかも。和田(毅・福岡ソフトバンク)は知らない」と、どんどん情報をくれる。思ったことを、ただ言っているだけなのでは? と信ぴょう性を疑いたくなったが、かつては、エクスポズ(現ナショナルズ)、レッドソックスでもGMを務めたベテランGM。それなりの意図があってのことと理解した。

ヤンキースも入札をほのめかす

 さて、GM会議の終わった15日夕方の段階では、ダルビッシュがポスティングされるとしたら、レンジャーズ、オリオールズ、ブルージェイズが入札確実と予想できたわけだが、翌16日、オーナー会議が始まるのに合わせてホテル入りしたヤンキースのハル・スタインブレナー共同オーナーがダル獲りをほのめかして、さらに場に動きが出た。

 午前中、チェックインしてすぐに囲まれたスタインブレナー氏は、「過去の失敗(井川慶獲得)は、関係ない」と話し、ダルビッシュの入札には、消極的なのでは? という見方を一蹴。「選手はそれぞれ、全く違う」などと話した。
 もちろん、はっきりと言質を与えたわけではないが、スタインブレナー氏をよく知るニューヨークの記者に聞けば言う。
「行間を読むなら……、ヤンキースの方向性が明らかになった。入札するだろう」
 本命参戦だ。これでほぼ、プレーヤーが出そろった。

 もっとも、肝心のダルビッシュ本人が決断を発表していないのだから、すべては仮定の話で、他の日本人選手にしても、正式にフリーエージェント宣言、あるいはポスティングされた選手はいないのだから、取材もそこで行き詰まった。

 チームにしてみれば、踏み込みすぎれば、タンパリング(事前交渉)にもなる。彼らが慎重なのも理解できた。それでも、何チームかがあえてダルビッシュ入札を匂わせたのは、メディアを使って他チームを牽制(けんせい)したかったのだろう。

レンジャーズのライアン社長は取り合わず

 話を少し戻すが、やはりレンジャーズのレバインGM補佐の発言は、勇み足だったのかもしれない。
 オーナー会議を翌日に控えた16日の夕方になって、レンジャーズのノーラン・ライアン社長が到着。朝からそれを待っていた日本人メディア、およそ20人が取材態勢に入る。無断で囲むと、ライアン社長の後ろにピタリとついている広報から抗議されそうだったので、一応、筋を通した。

「社長に少し話を聞きたいんですけど」
 するとその広報は、取り付く島もなく言った。「何も話すことはない」。
「いやいや、まだ、何の件かも説明もしてないんですけど」
「君たちが聞きたいことは、分かっている。だから、話せない」
状況をすっかり理解していた。若いレバインGM補佐が怒られてなければいいが。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント