全日本女子、チーム力でつかんだ世界王者ブラジル撃破=バレーW杯 自信取り戻す大きな1勝で五輪への夢つなぐ

田中夕子

悪い流れを断ち切った木村の一撃

勝負どころでスパイクを決めた木村 【坂本清】

 バレーボール女子ワールドカップ(〜18日、東京など)第8戦。相手は世界ランキング1位のブラジル。

 第3セット終盤、23−19から23−22まで追い上げられたとき、苦い記憶がよぎった。

 昨年の世界選手権(東京)で、女王ブラジルをセットカウント2−0と追い詰めながら、まさかの逆転負けを喫した準決勝。そしてちょうど1週間前、フルセットで5−1とリードしていたにも関わらず、追い上げられて敗れた中国戦。3位以内に与えられるロンドン五輪出場権獲得を目指した今大会、7試合を終えて4勝3敗と日本にとって厳しい展開を招いた要因であり、課題とされていた「連続失点を断ち切る」という大きなポイントとまたも直面することとなった。

 24−22とするか、23−23になるのか。リベロの佐野優子(イトゥサチ/アゼルバイジャン)は二段トスをレフトの木村沙織(東レ)に託す。次の瞬間、クロスに刺さるようにスパイクが決まり、日本がマッチポイントに到達した。

 佐野はこう言った。

 「一番苦しいところでサオリ(=木村)が決めてくれた。流れを引き寄せてくれました」

 25点目も木村が決め、ブラジルに日本国内の試合では2001年以来実に10年ぶりとなるストレート勝ちを収めると、ベンチの選手も一斉にコートに立つ選手のもとへと駆け寄る。
 ブラジルに勝ったこともうれしい。だがそれ以上に、自分たちがすべきバレーをできたことがうれしかった。

 木村の言葉が弾む。
 「小さなことかもしれないけれど、きっかけをつかむことができました」

反省や課題が目立っていたブラジル戦前

ストレートで敗れたセルビア戦、がっくりと肩を落として引き上げる竹下(右)と佐野 【坂本清】

 第6戦のセルビア戦、試合前から「最重要ポイント」として警戒していたはずのセンター線からの攻撃を面白いように決められた。単に高さで勝るだけでなく、空中でのボールの扱い、スパイクコースの幅、狙うポイント。真鍋政義全日本女子監督もその差を認めざるを得ない差が生じていた。

 「今の日本チームにあのクイックをブロック、ディフェンスするのは難しいというのが現状です」

 そして、途中出場したチーム最年長のベテラン、森和代(岡山)は敗因をこう述べた。
「日本がセルビアに対して組んだシフトに対して、セルビアは『日本がこう来たから、こう攻めよう』と利用してきた。ブロックで止まらないならサーブで攻めようと思って深めに打っても、オーバー(ハンド)でボールを処理して、多少崩れてもクイック、コンビを使ってくる。試合中はずっと、相手が優勢でした」
 
 完敗だった。

 続く第7戦、韓国には3−0で快勝したが、連続失点を喫する場面や、防げるミスが幾度も生じるなど、合格点を与えるには程遠い内容だった。もっと簡単に勝つこともできたのではないか。勝たなければならないのではないか。勝利はしたものの、2戦を終えた時点では反省や課題ばかりが目立った。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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