見る者を驚かせ続けたカージナルスの“ミラクルラン”
決して諦めない“チャンピオンの心”
地元で優勝し、笑顔を見せるラルーサ監督(左)と、第3戦で3本塁打を放ったプホルス 【写真は共同】
レギュラーシーズンでは、8月25日の時点でワイルドカード首位のブレーブスに10.5ゲーム差を付けられながら、最後の32戦で23勝を挙げてポストシーズンに滑り込んだ。プレーオフでも地区シリーズでは大本命と目されたフィリーズに先に王手をかけられながら、最後は敵地フィラデルフィアでの第5戦を制して大番狂わせの主役となった。
1度や2度なら“偶然”でも、これだけ続けばそれは“必然”。ベテランと若手がバランス良くちりばめられた今季のカージナルスの主力選手たちは、修羅場でも力を発揮できる精神力を確かに備えていた。
「彼らは決して突き放されない。打順がどうであれ、誰が打席に入ろうと、必ず巻き返して来る。“チャンピオンの心”を持っているんだ」
ワールドシリーズでその粘り強さを思い知らされたレンジャーズのロン・ワシントン監督は、第7戦を前にそう語っていた。そう、その「Heart of a Champion」という言葉こそが、何より今秋のカージナルスの粘り強さを分かりやすく表現していたのだろう。
シーズンを締めくくる鮮やかなエンディング
「このチームには人々が思っているより多くのタレントがそろっているのは確かだけど、それと同時に素晴らしいガッツがあった」
細かな采配で知られるトニー・ラルーサ監督が、シリーズ終了後に「ガッツ」を強調したのは実に微笑ましく、同時に極めて正しく思えた。
プホルス、クリス・カーペンターという実績あるスーパースターが投打の軸となり、その周囲を肝の座った多くの仕事師たちが取り巻いた。ポストシーズン史上最多の21打点を挙げたフリース、フィールド内外でリーダーとなったランス・バークマン、球界有数の捕手であるヤディエル・モリーナらを擁する打線からは、要所で効果的な一打が飛び出した。そして有用なピースがちりばめられた投手陣を、ラルーサ監督は相変わらず実に巧みに使いこなしていった。
“タレント”と“采配”、若干の“幸運”に、多量の“ガッツ”。それらのすべてがタイミング良く融合され、カージナルスの“ミラクルラン”は続いた。
彼らは勝ち続け、番狂わせの連続で私たちを驚かせてくれた。スポーツファンが大好きな終盤の逆転劇を何度も演出し、連夜に渡ってコアな野球好きをテレビの前にくぎ付けにしてくれた。そして最後の最後で、近年では最高レベルのワールドシリーズをドラマチックな形で制し、誰もが納得する形で5年振りの王座に返り咲いた。
7試合にわたるスペクタクルの余韻はいまだに残る。数々のハイライトシーンの残像も簡単には消えない。波乱万丈の2011年MLBシーズンを締めくくるにふさわしい、それは鮮やかで適切なエンディングだった。
<了>