イチロー検証<その3>:今季の成績は、契約交渉の不利となりうるか?

木本大志

年1000万ドルがたたき台に?

過去の実績や“イチロー・ブランド”の評価は? 【Getty Images】

 いずれにしても、今オフに交渉をするとしたら、年1000万ドル(約7億8000万円)がたたき台になるだろうとシアトル・タイムズ紙のジェフ・ベイカー記者がブログにつづっており、スタート地点としては妥当。極端に高くもなく、極端に低くもない。問題は年数。2年か、3年か――。

 別の記者はただ、もう少し厳しい見方をしていて、「出来高をすべてクリアして初めて、年1000万ドルに届く契約になるだろう」と予想した。

「基本年棒は500万ドル(約3億9000万円)程度。打席数や観客動員数などをクリアすることで、ボーナスが加算される」

 確かに、この年齢になってくると、契約の半分程度をインセンティブが占めるという可能性は高い。ちょうど、ケン・グリフィー・ジュニアが2年前にマリナーズと契約を交わしたときがそうで、観客動員数、打席数などが実に複雑に絡められていた。

貢献度を考えれば、チームにとってはバーゲンプライス

 一方、セイバーメイトリックス的に考えれば、マリナーズファンの間で有名なブログ「U.S.S.Mariner」は2007年、イチローが5年契約を交わした際にイチローの勝利への貢献度を試算。

 イチローが攻守両面で創出するであろう得点数などをもとに算出した結果、向こう5年間で25勝分と算出し、前年のFA選手がもたらした1勝分の平均コストが400万ドルだったことから、そこにインフレ率など加味した数字を掛け合わせてイチローの市場価格を5年、1億2100万ドルとはじき出すと、「今回の契約は、マリナーズにとってバーゲン価格だ」と評価した。

 今回もそれに倣えば、仮に3年契約とした場合、イチローの貢献度は向こう3年間で5勝分となった。

 1勝分のコストの算出が難しいが、暫定的に500万ドルと設定すれば、3年2500万ドルというのが、セイバーメイトリックス的なオファー額。そしてここに、イチローという付加価値が加わることで、総額は3年3000万ドルを越えてくると予想できる。再契約のボーナスまで含めれば総額は4000万ドル前後か。

 見積もり要素がやや大雑把なので、あくまで目安だが、チームがもしも3年3000万ドルでイチローと再契約できれば、やはりバーゲンプライスということになるかもしれない。

 さて、今年も例年通りの数字であれば、契約交渉がもっとすんなりいったであろうとは予想できるが、チームとしては契約を延長する方向で固まっている。

 オフの間に交渉が順調に進めば、マリナーズが日本で開幕戦を行う場合、その場で契約発表が行われるかもしれない。

<了>

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