五輪への険しい五輪への道のりに挑む新生ハヤブサジャパン=男子バスケ

松原貴実

「ものすごく熱い男」とチームメートに評される正中 【写真:AZUL/アフロ】

 9月15日〜25日まで中国・武漢で開催される第26回FIBAアジア男子バスケットボール選手権大会に出場する日本代表チーム(ハヤブサジャパン)が12日、日本を出発した。

 2012年ロンドン五輪予選も兼ねたこの大会には16チームが参加するが、五輪出場権を獲得できるのは優勝チームのみ。中国、韓国という東アジアのライバルはもとより、前大会の覇者イランを筆頭に台頭著しい西アジア諸国を視野に入れると、日本が目指す五輪への道のりは極めて険しいと言わざるをえない。

 加えて、行く道に不安の影を落とすのは、司令塔・田臥勇太(リンク栃木)、身長210センチのセンター青野文彦(パナソニック)、ベテランシューター永山誠(パナソニック)のケガによる戦線離脱。なかでもかじ取り役として全幅の信頼を寄せ、『田臥ありき』のチーム作りを目指したトム・ウィスマンHC(ヘッドコーチ)にとって、長引く主役の故障は誤算であり、その降板は大きな痛手だったはずだ。

 しかし、その一方でチームに差し込んだ明るい光もある。離脱した選手に代わり、ロースター入りした3人の選手。正中岳城(トヨタ自動車)、太田敦也(浜松・東三河)、松井啓十郎(トヨタ自動車)は8月のウィリアム・ジョーンズカップ(台湾)で大暴れし、その勢いを味方にして代表チームへの階段を駆け上がった。

正中「日本のために、夢の舞台に立つために」

「自分はそう思ってはいません」――田臥選手の代わりに選ばれたという意識はあるか?という問いに正中はきっぱりそう答えた。
「だれかの代わりではなくて、日本のために、また夢の舞台に立つために、そういうシンプルな気持ちでやりたいと思います。自分ができることを精いっぱいやるだけです」
 経験、実績、年齢などをもとに3つにグループ分けされた代表チームのグループ2に所属し、若手チームのリーダーとしてジョーンズカップに出場することは決まっていた。だが、故障者が相次いだグループ1の練習に太田とともに助っ人の形で参加し、そのままA代表として中南米遠征に参加。終了と同時に台湾に飛び、翌8月9日の4試合目(韓国戦)からコートに立った。

「疲れていないと言ったら嘘になりますが、これは『若手』というくくりで自分が出られる最後の大会だという意識があって、それがモチベーションにもつながりました。自分たちが年下の選手を引っ張っていかなければならないと思ったし、それこそ大学の上級生のような気持ちで、全力で、夢中でプレーしました」

 持ち前の負けん気の強さを全面に出し、『下級生たち』をリードする。相手のディフェンスを切り裂くような鋭いドライブ、ためらいのないアウトサイドシュート、流れに乗れば大声でほえ、腕を振り上げてチームを鼓舞した。ヨルダンとの5位決定戦では24得点。ファウルゲーム(意図的にファウルを犯して時間を止める戦術)に出たヨルダンから得たフリースローはノーミスの6/6。最後まで集中力を途切らすことなく、77−73で勝利に貢献した。

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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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