五輪への険しい五輪への道のりに挑む新生ハヤブサジャパン=男子バスケ

松原貴実

太田と松井の持ち味にも期待

bjリーグから代表に選出された唯一の選手・太田 【写真:築田純/アフロスポーツ】

「ものすごく熱い男ですよ。勝利に貪欲で、勝負にこだわる。チームを波に乗せるのも本当にうまい」というのが太田の正中評。だが、そういう太田自身も屈強の外国人選手を相手に一歩も引かぬプレーで、チームに流れを呼び込んだ。

 浜松・東三河フェニックスに所属する太田は、代表チームで現在唯一のbjリーグ選手。
「僕が知る限り、ここ数年でもっともたくましく変化した選手」と正中が言うように、外国人選手とマッチアップするリーグの中で「ビッグマンに対する気後れみたいなものはなくなったと思います。前より積極的なプレーができるようになった自覚はありますね」

 中南米遠征を終え、ジョーンズカップでチームと合流したとき、「俺たちが来たからダメになったとは言われたくない。絶対強くしてみせる」と密かに自分に誓ったと言う。

「めちゃめちゃ疲れていたけど、なんか気持ちだけは熱かったです(笑)。中国(アジア選手権)でも熱い気持ちで戦いたい。恐れず身体を張って……自分に求められているのはそれしかないと思うので」

 敗れたとはいえ、第7戦フィリピン戦で見せた松井の8/8の3Pは圧巻だった。この試合は第5戦(対ヨルダン25得点)を上回る27得点をマーク。

「フリーランスに自分の打ちたいところで打たせたら、かなりの確率で決めてくる。僕らから見たら、ちょっとタイトだろう、ちょっと早いだろうというセレクションでも自分が決められると思ったら打つ。決めりゃあいいんでしょ? という図太さと自信がKJ(松井)にはあるし、シューターはそれが欠けてはダメだと思う」(正中)

 モントロス・クリスチャン高からコロンビア大と米国でプレーした松井にとって外国人選手とマッチアップは「モチベーションが上がって楽しい」もの。自身のコンディションも最高という本番では、執拗(しつよう)なマークに苦しむエース川村卓也(リンク栃木)をサポートする連続3Pにも期待がかかる。
「チームが苦しいときの3P、相手にダメージを与え、チームに勢いを与える3P。僕の仕事はシュートです。そのほかに何かありますか?(笑)」

「いいチーム」と言い切るキャプテン網野

 正中には2年前のアジア選手権(中国)での苦い思い出がある。ケガ人が出て手薄になったポイントガードのポジションを補うため急きょ代表チームに合流したが、まさかの登録ミスでコートに立つことは叶わなかった。目の前で見た日本チームの惨敗、10位に終わった屈辱。それは子どものころからあこがれていた代表チームとはあまりにかけ離れた姿だった。

 それから2年の時を経て、同じ中国の地で同じアジア選手権に挑むことに「自分を奪い立たせる何か」を感じている。
「スキルも気持ちもそろいのユニフォームにかける思いも、日本で1番高いレベルにあるのが僕が描く代表チーム。それを自分の中で確認しながら、思い切って行こうと思っています」

 今大会の日本代表メンバーの内、ゴールデン世代と呼ばれる選手は竹内公輔(トヨタ自動車)、竹内譲次(日立)、石崎巧(日本バスケットボール協会)、正中、太田の5人、それより下は広瀬健太(パナソニック)、松井、川村の3人でチームの平均年齢は27.3歳と若返った。

 キャプテンの網野友雄(リンク栃木)は言う。
「いいチームです。ハツラツとした若さがある。ゲームに向かう熱い姿勢もある。このチームが持つすべての力を出し切って五輪出場権に挑みます」

 グループCの日本が予選ラウンドで戦う相手はインドネシア、ヨルダン、シリアの3カ国。険しい道のりに挑む新生ハヤブサジャパンの戦いは、9月15日のインドネシア戦から始まる。

<了>

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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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