石川遼、スイング改造がもたらす光と闇

新たなスイング理論 課題は安定感

課題はやはり安定感。練習と同じようなスイングを試合でも見せたい 【Getty Images】

 そのスイング改造は、7月の「長嶋茂雄セガサミー招待」の直前にジャンボ尾崎から否定され、新たなスイング改造を始めたばかりだった。とはいえ、ジャンボ尾崎に指摘された改造のいくつかの部分は、クラブがインパクトする際に、手の位置はクラブヘッドより先行してリリースポイントを極力遅らせるハンドファーストなど父親とともに育んできたスイングとほぼ同じ。言わば原点回帰でもある。

 勝美氏のスイング理論は、物理や力学を突き詰めた産物である。物の道理を考え抜いて構築された理論だ。トーナメントという修羅場で戦ってきたジャンボ尾崎の経験と、勝美氏が頭脳で作ってきた理論との接点を石川遼は見つけたようだ。
「これまでもジャンボさんに指摘されたことを父に話すと『それは道理にかなっている』と言われるのがいつもの流れでした」と石川が話すようにジャンボ尾崎が経験的に体得してきたスイング理論と、勝美氏が物理の観点から考え出した理論との融合を新たなスイング改造に石川は感じ取ったに違いない。

 11月から始めた改造を消去しつつ、新しいスイングで臨んだ「ブリヂストン招待」では「コースを練習場」と思いプレーしたことが、結果的に好成績に結びついた。しかし、「スイングは良かったり、悪かったり」と石川自身が語っていたように、まだまだ安定感には欠けている。
 勝美氏は「練習は明日の試合のためにやるのではない。1年先のためにやるのだ」と小さいころから息子に教えてきたのだから焦ることはない。そして「練習でできても、本番でできなかったら、それはできたとは言わない」とは勝美氏の口癖だ。
「全米プロ選手権」から帰国した石川遼は、「成功体験も失敗体験も今は両方が大切」と語った。練習場でできたことが、試合でもできるようになった時、石川遼の快進撃が再び始まる。

<了>

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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