真夏の祭典、G1制覇を目指し――=新日本プロレス・棚橋弘至インタビュー

茂田浩司

「楽しいことがなかった日」は僕を見てください

「『一日、何も笑ってないな』っていう日がある人は俺を見てほしい」とアピール。 【スポーツナビ】

――試合後のコメントはいつも面白いですよ。「チャンピオンはどんな選手にも対応する。ケツぐらい出します」(6.21、J SPORTS CROWN。邪道にタイツを引っ張られて)「(王者組は)1+1が5億になってた。10億になって次こそは」(7.3、IWGPタッグ挑戦も敗北して)等々、気の利いたコメント連発で。

 楽しけりゃいいんですよ、俺(笑)。見て貰って、笑顔になって貰うのが一番大事だなって。なんか「一日、何も笑ってないな」っていう日がある人は俺を見てほしいですね。試合でも、ブログでもいいし。1日1回笑ったら、グッスリ寝られる気がするんですよね。

――なでしこの澤穂希選手の「苦しい時は私の背中を見なさい」ならぬ「笑ってない日は棚橋弘至を見なさい」ですね。

 ええ、楽しいことがなかった日は俺の動向をチェックしてみてください。必ずバカやってますから(笑)。そこには、夢と希望と笑いと変顔と「半ケツ」もあるかもしれないんで要チェックです(笑)。

――(笑)。しかし、改めてG1の日程を見ると試合、移動、試合で過酷ですね。

 参加人数は過去最多、最大級です。去年が20年目の節目で、今年からまた新しい試みに挑戦していくのが新日本プロレスですけど、こう来たか、と(笑)。日程ツメツメで(苦笑)、毎年最終日は準決、決勝ですけど今年の最終日は決勝のみ。試合のクオリティが上がるからいいと思うんですけど、そこまでの道のりが本当にハードですね。特に俺はベルトを巻いているので、対戦相手にもよりますけどメインイベントが多いと思うんですよ。勝利という結果を残した上で、お客さんを満足して帰すことが出来るか、まで考えてますから。「勝ちたい」だけのみんなとはちょっとステージが違うんですよね(笑)。

――その「他の選手のさらに上を行く」という意識は試合から伝わってきます。先日のバーナード選手とのIWGP防衛戦でも相手の得意技を受けて受けて「その上」を行って勝つ、という。

 プロレスは相手あってのものなんで、もちろん自分の力で盛り上げるのが一番いいんですけど、相手の力を目一杯引き出して、相手に盛り上げて貰うのが俺的には楽なんですよね(笑)。自分一人だけで盛り上げなくていい、みんなで作り上げていくんだ、という。

――G1では対戦相手のマークもキツいわけですね。

 最もマークされる人間ですけど、相手がベストでぶつかってくればそれだけ盛り上がりますから楽しみですよ(笑)。あと、こういう短期間での連戦は切り替えが大事です。俺は負ける気はないですけど、他の選手は勝ったり負けたりするかもしれない。その時いかに短時間で切り替えるか。そしてコンディションの維持ですね。どうしても疲れが溜まってきますから。俺は生まれてから「疲れた」ことがないですから関係ないですけどね(サラリ)。

――他の選手たちが疲労とダメージで大変な時でも一人で涼しい顔と(笑)。さすが王者ですね。

 その時点で俺と他の選手はハンディキャップがだいぶあるんですよ、フフフ。

「賛否」があって初めて話題になる。でも…、なぜみんな僕を好きにならないんだろう?

業界の顔になった今でも覚醒の途中! 「会場で待ってますから、スポナビ読者の皆さん、愛してま〜す!」 【スポーツナビ】

――では最後に、スポナビ読者に向けてのメッセージをお願いします。

 はい、僕、学生の頃はG1クライマックス全大会に行ってたんですよ。

――それ凄いですね。

 両国5連戦とか行きやすかったんで。今回は全10大会、福岡、愛知、大阪から横浜、東京と行きますのでお近くの方はぜひ会場に来てほしいです。「G1クライマックスとはこういうものだよ」というのを肌で感じて貰って。もちろん俺が盛り上げますから!

――ちなみに、最近は「昔の新日本」を見てた30代、40代の男性がお子さん連れで会場に来るそうですけど、昔の新日のイメージと「エアギターの棚橋」のギャップに驚いたり、拒絶反応が起きたりはないですか?

 いいんです!(キッパリ) 「昔の新日本プロレス」は永田(裕志)選手や後藤(洋央紀)、(中邑)真輔がいるんですよ。メインイベントに僕が出て行くと、受け入れる人、受け入れられない人、やっぱり出てくるんです。でもどっちも大丈夫です。受け入れてくれたら僕を応援してくれるし、ダメだったら他の選手を応援するし。好きも嫌いも全部巻き込んでこそ本物なんですよ。「賛」だけでも「否」だけでもダメなんです。賛否があって、初めて話題になるんです。

――なるほど〜、素晴らしいです。

 だ・か・ら、稀有な存在なんですよね〜(ニッコリ)。

――普通は「みんなに好かれたい」と思いがちですもんね。

 いや、もちろん僕も最初はそう思ってましたよ(笑)。だって「悪いところはどこにもないのに、なんで俺のこと嫌いなんだろ?」ってずっと思ってましたからね。

――ハハハハ。

 でも人間関係は生理的なものもあるし、仕方ないんだなって。そう思えてから次のステップに上がりましたね。

――その覚醒があったのはいつ頃ですか?

 え……(しばし考えて)いや、まだ覚醒の途中です。だって、今でも悪いところは何もないと思ってますから(笑)。

――「みんな、俺のことが好きなはず」と考えられるタイプ(笑)。

 ええ、でもなぜか時々「嫌い」って言われるんで「なんでだろ?」って考えますよ。そこから「じゃあ、どうしたら好きになって貰えるんだろう?」って考えるのも好きなんですよね。それにはまず実際に僕を見て貰わないといけないんで(笑)会場で待ってます。スポナビ読者の皆さん、愛してま〜す!

<了>

3/3ページ

著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント