チームの象徴、メッシの活躍に沸いたコルドバの夜=中田徹のコパ・アメリカ通信

中田徹

観客たちはメッシにひときわ大きい歓声

アルゼンチンはアグエロ(左から2人目)の2ゴールなどで快勝し、メッシも2アシストの活躍を見せた 【写真:ロイター/アフロ】

「オーレー、オレオレオレー! メッシー! メッシー!」
 キックオフ前からサポーターはひたすらメッシの名前を叫び続け、メッシも好プレーを連発した。前半だけで、一体いくつのチャンスをメッシは作ったのだろう。10分にはワンツーからシュートを放ってCKを獲得。35分にはガゴからのロングパスを巧みに操り、右サイドでナイストラップ。そこから2人をかわし、絶妙なスルーパスでアグエロのチャンスをお膳立てした。37分には右サイドからクロスを上げるも、ぎりぎりイグアインに合わず。43分には相手ボールをカットし、さらにマークをかわしてスルーパスをイグアインに出すも、シュートをふかしてしまう。

 メッシが好プレーを連発しても、味方がどうしても決め切れないアルゼンチン。こうして「不調メッシ」のレッテルがまた貼られようとしている。43分の何とも気が抜けるようなイグアインのシュートミスには、観客たちもいすを蹴ってあきれていた。
 ところが45分、メッシの直接FKが壁に跳ね返されてからの二次攻撃で、アルゼンチンがとうとう先制点を奪う。ガゴのミドルシュートのこぼれ球をアグエロが押しこんだのだ。得点シーンはメッシと関係なかったが、それでも観客たちは更衣室へ引き上げるメッシに、ひときわ大きい歓声を上げていた。

 前半終了間際のアグエロのゴールは、チームをリラックスさせた。後半に入ると、メッシのチャンスメークがゴールにつながり出した。52分にはアグエロに、63分にはディ・マリアに、ラストパスを通して2アシスト。こうしてアルゼンチンは3−0で勝ち、メッシは文句なしのマン・オブ・ザ・マッチに輝き、チームも無事グループリーグを2位で通過した。

コルドバの夜空に響き渡った歌

 ここでは、いぶし銀の役割を果たしたMFガゴの活躍もしっかり書き留めておきたい。メッシはセオリー無視の、自陣でのドリブルでボールを失うこともある欠点がある選手だが、ガゴは攻守にわたって常にメッシをケアし続け、彼の力を存分に引き出した。また相手の攻撃の芽を摘むマスチェラーノも、パスの預け先としてガゴを探していた。こうしてマスチェラーノ→ガゴ→メッシというホットラインができたのである。アルゼンチンの先制ゴールも、ガゴのシュートが効いていた。

 GKロメロもアルゼンチンのグループリーグ突破に貢献した。コスタリカ戦ではチームが大量リードを奪った後、43分に好セーブを見せただけだったが、この瞬間、第2戦のコロンビア戦(0−0)でのビッグセーブ連発を思い出した。この試合は思い出深きメンドーサの安宿、ホテル・スイーツの食堂で各国サポーターと見ていたのだが、ロメロがピンチを救うたびに「オー、ロメロ」の歓声が沸き、アルゼンチンメディアも「サン・ロメロ(聖ロメロ)」と守護神の活躍をたたえていた。

 こうして「勝つか、勝つしかない」(アルゼンチンメディアの戦前の表現)というプレッシャーがのしかかる試合を制し、面目を保ったアルゼンチン。コルドバの夜空には試合開始から終了まで「メッシー! メッシー!」の歌が響きわたった。2ゴールを決めたアグエロら、メッシ以外にもヒーローが生まれた試合だったが、やはりチームの象徴、メッシの大活躍は何よりのムード向上につながった。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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