元王者の意地! フェデラーがジョコビッチの連勝止める=全仏オープンテニス第13日
元王者・フェデラーが接戦を制し決勝へ。ジョコビッチの連勝を止める歴史的一戦となった 【Getty Images】
序盤のリードが勝因
誰がジョコビッチを止めるのか――今のテニス界最大の関心事は、世界が注目した一戦にふさわしいパフォーマンスで彩られ、考えうる最高のドラマで幕を閉じた。
準々決勝が不戦勝だったジョコビッチには中4日の休みがあった。フェデラーは、体力が温存できているはずの24歳とのスタミナ勝負は避けたかっただろう。その意味で、最初の2セットをフェデラーが取ったことには重大な意味があった。
今季の対戦成績はジョコビッチの3戦全勝。勝ち方を心得ていた第2シードは、セオリー通りフェデラーのバックサイドを攻めた。しかし、今大会の使用球は「スピンがかかりづらい」とナダルをはじめ数人の選手が指摘しており、バック側に高く弾むスピンボールを苦手とするフェデラーには助けになっているかもしれない。
第1セット、立ち上がりの良かったジョコビッチに対し、先にリードする展開で追い付かれながらも、フェデラーは全盛期を彷彿(ほうふつ)とさせるキレとアグレッシブさでタイブレークをものにした。ジョコビッチの落胆を見れば、第1セットが勝敗を大きく左右したといえる。
歴史的一戦を制したフェデラー、決勝でナダルと対戦
その中でフェデラーがブレークバックし、そのまま2度目のタイブレークへ。最後は203キロのサービスエースをセンターにたたき込んだ。瞬間出るはずの雄叫びより先に、目の前に立てた人差し指にどんな感情が込められていたのだろうか。今最強のプレーヤーと言われるジョコビッチの威力の前に、史上最強と呼ばれた元王者・フェデラーがベストパフォーマンスとプライドを取り戻した、“歴史的な”一戦。目のあたりにしたファンは幸せだ。
今季のベストマッチの一つに数えられるこの準決勝に埋もれがちだが、第1試合のナダルとマレーの同世代対決も6−4、7−5、6−4のスコア以上に見応えがあった。マレーが18回ものブレークポイントを握ったせいだろう。しかし、この日が25歳の誕生日だったナダルは、そのうちの15回をしのぎ、逆に自分は13回あったブレークポイントのうち半分近い6回をものにする勝負強さを見せた。そして、ビヨン・ボルグに並ぶ史上最多となる6度目の栄冠に王手をかけた。
4大スターによる準決勝2試合。なんとも贅沢(ぜいたく)な金曜日だった。
<了>
文・山口奈緒美(やまぐち・なおみ)
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