山本隆弘、3年ぶりの全日本代表に懸ける想い=バレーボール

市川忍

弱点を克服し、「できる」確信を得る

山本は弱点を克服し、「できる」確信を持ってロンドン五輪へ挑む 【坂本清】

 しかし、そんな山本が行動を起こす。昨年の春、パーソナルトレーナーと契約し、肉体改造に取りかかったのである。
「たとえば一例ですけど“なぜジャンプしたときに体が流れるのか”と感じる自分の弱点がある。今お世話になっているトレーナーに診てもらうようになって、こういうトレーニングをすれば改善できるという明確な答えが見えたんです。実際に、数値を出して、どこが弱いかを見せてもらって、その弱点を克服するメニューを作った。徐々に体が変わっていく手応えもあったし、成果も出ました」

 山本の弱点は右のでん部だった。右足で踏み込むサウスポーの山本にとって、右の筋力がジャンプの質を決める。それまでの山本は右でん部の筋力が弱いため、スパイクの際に空中で体が横に流れる傾向があった。

「まず、真上に跳べるようになったので高さは維持できるし、同時に両方の筋肉を使って跳べるのでスピードも出ました。全日本の候補選手が発表になって、自分が選ばれていると知ったときは本当にびっくりしましたよ。以前の自分なら、『できるのかな』という不安の方が大きかったと思います。でもトレーニングを積んだ今は『できる』という確信を持っています」

 まずは今年、秋に開催されるワールドカップ(日本)に向けて清水邦広(パナソニック)、上場雄也(FC東京)ら若い選手とオポジットの枠を争うことになる。

「昨年までの全日本を外から見ていた印象は、もちろん破壊力はあるけれど、その中で失点も多い戦い方だと感じました。僕は経験がある分、失点を減らして、攻撃の効果率を上げられるんじゃないかと思います。それから、ベテランとしての役割が求められるのも分かっています。積極的にコミュニケーションを取っていきたい。絶対に負けられない、本当に苦しい戦いになったときに、そこにいる選手全員がお互いを理解していないと結束できないと思いますからね」

悔しさを晴らすために「自分が納得いくまでチャレンジしたい」

 全日本候補が発表されたとき、植田監督からは「3年間、代表を外れて悔しかっただろう。がんばっていこう」と声をかけられたと話す。

「もう一度、全日本に来ようと思った一番の理由は、やはり北京五輪です。その後も引退という二文字が常に頭にありました。でも、あの北京の悔しさを残したまま辞めていいのか。諦めてしまったら後悔するんじゃないか。あの悔しさを晴らしたいという思いだけで練習してきた。もう一度、自分が納得できるまでチャレンジして、ダメだったら、それでいい。若い選手に『がんばれよ』って言って、気持ちよく全日本を去れれば最高じゃないですか」

 5月27日からワールドリーグのインターコンチネンタルラウンドが始まる。山本は遠くロシアの地から、再び五輪へのスタートを切る。

<了>

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著者プロフィール

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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