ツインズ西岡を襲った突然の“悪夢”

杉浦大介

ヤンキース戦の守備で走者と交錯し、腓骨骨折が判明したツインズの西岡 【Getty Images】

 ミネソタ・ツインズの一員としてメジャーの扉をたたいたばかりの西岡剛にとって、“悪夢”と呼んでいい瞬間は7日(現地時間)のヤンキース戦で訪れた。

 ニューヨークで迎えたシリーズ最終戦、その7回裏、1死一塁の場面。サードゴロからツインズ守備陣が併殺を狙ったプレーで、セカンドの西岡が一塁走者だったニック・スイッシャーと接触。激しいスライディングを受けて左足を痛めた西岡は、通訳らの肩を借りてヤンキースタジアムのフィールドを去った。
 レントゲン検査の結果、左ひざ下の腓骨(ひこつ)の骨折が判明。地元に戻った8日にさらなるメディカルチェックを行ない、今後に向けての詳しい見通しが明らかになるという。とりあえず15日間の故障者リスト入りはすでに発表されている。

西岡の骨折箇所 【写真は共同】

「立ち上がってもう1回プレーに復帰しようと思ったが、足が思うように動かなかった。負けが込んでいる中に、チームに暗いニュースを持ち込んでしまった。チームに申し訳ないと思っています」
 ロッカールームに戻った西岡は、かたわらに松葉づえを置いた痛々しい姿でそうコメント。今季2勝4敗と出遅れたツインズにとってももちろんだが、新天地で力を示さねばならない西岡本人にとっても、余りにも痛いアクシデントである。

相反する西岡への評価

 開幕からここまでの6試合は山あり谷ありだった。守備では最初の3試合で2エラーを記録し、打撃の方も通算打率は2割8厘(24打数5安打)と低調。西岡のプレーを見た現地記者に話を聞いても、ポジティブな意見ばかりでは決してなかった。
「ダブルプレーの際の動きや、スナップスローの鋭さはもう1つ」「打撃面ではインサイドの速球には苦しむかもしれない」「体格的に余りにきゃしゃで、メジャーのスケジュールを乗り切る体力は未知数」といった指摘は、それなりに的を射ているようにも思えたものである。

 ただ4日(現地時間)からのヤンキースとのシリーズでは、守備では軽快に打球をさばき、打撃でも最初の2試合で3安打。控えめな発言が多い西岡だが、2安打を放った4日の試合後には「いい感じで打てた」と自信を感じさせるセリフもあった。
 そしてそのスイングを間近で観たヤンキースのラッセル・マーティン捕手に聞いても、打撃面の評価は非常に好意的だった。
「西岡はホームプレート近くに構えているけど、それは一般的にインコースのさばき方に自信がある証拠だ。選球眼がいいし、バットに当てるのがうまく、難しい球はファウルに逃げることもできる。質の良いインコースの速球は誰にとっても難しい球だけど、彼にとって大きなハードルになるとは思わなかった。プレーに臨む姿勢も良いし、ツインズにさまざまな形で貢献できるんじゃないかな」

 懐疑的な見方もあれば、このようにポジティブな評価もあった。もちろん最初の2シリーズを終えた時点で新人の力を判断するのは難しく、周囲もまだその実力を図りかねているというのが正直なところだった。

再び力を示すチャンスは訪れるのか

 真価を問われるのはこれから。そして、お楽しみもこれから。開幕直後の緊張感も徐々にほぐれ、しかも明日から地元ミネソタに戻り、いよいよ本格的な戦いが始まるところだったのだが……。
「心にも痛みがあるし、体にも痛みがありますけど、生きてますからね。日本でもいろいろな事件があったし、僕も負けないように、日本の皆さんと一緒に頑張って行きたいと思います」
 けがの発生直後、西岡は気丈にそう語った。しかしまだメジャーリーガーとして実績を積み上げていないこの時期に、ブランクを作る痛手は計り知れない。

 ロン・ガーデンハイアー監督は軽症と強調していたが、実際には復帰時期は未定。数週間で戻れれば良いが、時間がかかった場合にはその間に若手が台頭するかもしれない。もし回復が大幅に遅れれば、3年連続地区優勝を狙うツインズはトレードなどでの補強すら考慮に入れるかもしれない。そうなった場合、西岡の今後のプレー機会は必ずしも約束されたものではなくなるだろう。

「ツインズの周囲の人間によると、開幕直後の西岡は緊張に悩まされていたようだ。それでも西岡はすぐに落ち着きを取り戻し、メジャー有数の上質なセカンドになっていくと未だに信じられている」
 けがを負う直前に「SI.com」にアップされた記事内で、「スポーツ・イラストレイテッド」誌のジョン・ヘイマン記者はそう記していた。

 それほど高いポテンシャルへの評価を裏付け、同時に懐疑的な意見を語った人をも見返すために……再びフィールドで力を示すチャンスが、すぐにまた訪れることを願わずにはいられない。
 まずは明日――。ミネソタに戻っての精密検査で、西岡の左足にどんな診断が下されるかに注目が集まる。

<了>
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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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