プロバスケット「bjリーグ」 東は浜松が独走 西は混戦模様=2010−2011シーズン前半戦を振り返る
東カンファレンス、浜松、選手層の厚さで他を圧倒
スピードを武器とする浜松のキャプテン岡田慎吾 【写真:Atsushi Tomura/アフロスポーツ】
今シーズンの浜松は、らせん状に走りながらゴールに向かい、速いパス回しでゴールを狙う『スパイラルオフェンス』を取り入れ、よりアグレッシブなバスケを展開。昨シーズンは得点源が主力外国人に偏りがちだったが、今シーズンはチーム全体でバランスよく得点を重ねており、その点からみても大崩れしない安定感のあるチームといえる。
浜松の強さを支えているのは選手層の厚さ。特に日本人選手はリーグ随一だろう。長年、中村和雄ヘッドコーチ(HC)のもとでプレーし、中村イズムを熟知している大口真洋をはじめ、スピードと切り替えの速さが持ち味のキャプテン岡田慎吾、昨年のbj−KBL(日韓)チャンピオンシップでMVPに輝いた太田敦也など、ベンチを含めて個性豊かなメンバーがそろっている。bjリーグ参入時から「日本人が活躍してこそリーグが面白くなる」と言い続ける中村HCにとって、外国籍選手中心ではなく、日本人選手がチームの核となることが、目指すチームの形なのだ。今シーズンから新たに導入された『第2Qのみ、オンザコート2(外国籍選手2名)』という新ルールも、日本人選手の層が厚い浜松にとっては追い風となっている。
順調にみえる浜松だが、後半戦に入ったとたん中村HCの雷が落ちた。「どこかで負けたほうがいいかもしれない。勝てばいいだろうと安易にバスケをやっているところがある」。勝利を重ねるうちにセルフィッシュなプレーに走る選手が出てきたため、せっかく築き上げてきたチームバスケが乱れつつあると見ているようだ。選手自らの気持ちの緩みによって足元をすくわれることがないよう、中村HCが心配して言ったことだが、実際に、2月5日の新潟戦ではオーバータイムにもつれ、6日には連勝が「10」でストップしてしまった。2連覇に向けて、今が浜松の正念場なのかもしれない。
東の台風の目は埼玉? 悲願のプレーオフ進出を目指す
オリジナル6(bjリーグ初年度からリーグに所属する仙台・新潟・埼玉・東京・大阪・大分の6チーム)の中で唯一プレーオフに進出したことがないのが埼玉。リーグが東西カンファレンス制を導入してからは、富山グラウジーズと東カンファレンスの最下位争いを続けており、なかなか下位から抜け出せない。もともと実業団チームとして1982年に創立された埼玉だけに、長年応援しているコアファンも多く、今年こそはプレーオフ進出を決めたいという思いは強い。
今シーズンは、以前ハワイ大学でヘッドコーチを務めたボブ・ナッシュ氏のもと、「練習への取り組み方など、プロとしておろそかになっていた部分を一から変える」という意識改革からスタートした。今まで埼玉に根付いてきた負の文化を変えることが、チーム再生の一歩だとナッシュ氏は語る。そのかいあってか「今シーズンはチーム内のコミュニケーションがとれている。練習後は自分たちの意見をぶつけ合って、よりいい方向にもっていこうとしている」と北向由樹が言うように、チームの雰囲気は大きく変わったという。
今シーズンは例年になくいいチーム状態といいながらも、開幕直後は4連敗、5連敗が続き、なかなか結果がついてこなかった埼玉。しかし、12月中旬から年をまたいでチーム新記録の7連勝を挙げ、非常にいい形で前半戦を終えることができた。後半に入り1勝3敗とつまずいたが、7連勝で得た勝利のスピリットを後半戦で持ち続けることができれば、東カンファレンスの台風の目となる可能性は高い。まずは勝率5割に戻すことが目先の目標となる。万年下位から脱却し、悲願のプレーオフ進出はできるだろうか?