“新生”錦織圭、手にした勝ち星と露呈した課題=全豪テニス
フィジカルと守備力、課題が明確になった敗戦
1、2回戦は新たなプレースタイルで勝利をもぎとったが、3回戦はベルダスコに敗戦。新たな課題が露呈した 【写真:アフロ】
「あの雰囲気に飲まれ、完全に緊張してしまった」という立ち上がりは動きが固く、その焦りがさらにミスを誘発する。「相手は、前の試合で5セット戦っているのに、あれだけ動ける。トレーニングにしてもテニスにしても、まだまだ自分は足りないんだと痛感した」と悔しさを隠さぬ錦織だが、その相手のベルダスコは、アガシのトレーナーとして知られるギル・レイアスの元で肉体改造に励み、大躍進した経緯を持つ。これは、ギルバートのテニスを実践するには、まずは優れたフィジカルが不可欠であることの示唆でもある。そのことは、ボッティーニコーチの「今、最も重視しているのがフィジカルと、守備の技術の向上」という言葉からも明らかだ。
思えば、昨年の全豪準優勝者であり、今大会の優勝候補の一人であるアンディ・マレー(英国)も、ギルバートの元でフィジカルと守備力を上げ、同時にランキングもわずか1年の間に36位から8位まで上昇させた、ギルバート・イズムの体現者である。
そのマレーはギルバートについて、「ブラッド(ギルバート)は、戦術に優れた策士だ。彼からは試合の勝ち方を学んだ。仮にすばらしいプレーでなくても、勝つに十分な手段を教えてくれる。(錦織)圭にもそれは役立つはずだ」と、錦織にエールを送った。
標榜(ひょうぼう)するテニスを実践して得た2つの勝ち星と、課題を突きつけられた敗戦。
一年のスタートとしては十分過ぎるほどの手土産を抱え、錦織は新スタイル確立への第一歩を踏み出した。
<了>