東亜学園、「コツコツと」つかんだ優勝の証し=春の高校バレー・男子決勝
男子は東亜がV! 小磯靖紀監督を選手たちが胴上げ 【坂本清】
「雑草」世代が持っていた武器
昨春、昨夏、昨冬。春高やインターハイ、全国出場を懸けた東京都予選では、昨春の選抜優勝大会覇者である東洋と、接戦を繰り広げながらもことごとく競り負けた。
常に2番手だった。
初戦で負傷した3年生の白川明(左)。ベンチから力強くチームを鼓舞した 【坂本清】
「とにかく腐らず、目の前の課題にコツコツ取り組む選手たちでした」
ただひたすらブロックのフォームを確認しながら練習を繰り返す選手、自分よりも10センチ以上大きな下級生に負けじと一つでも多くの技を習得しようとする選手。監督やコーチの前で見せる練習ではなく、それぞれが、各々の課題と地道に立ち向かう姿を小磯監督は陰で見てきた。そして、中学時代にエリートとして名をはせた1、2年生が入学してこようとも、その真摯(しんし)な姿勢こそが技術や経験の壁をも越えるのではないかと、これまで全国大会で「雑草」の3年生たちを主力に据えてきた。
主役は全員
1年生の冨田直人。突然の出場機会にも、持てる力を発揮した 【坂本清】
攻守の要である白川明が、初戦の福島代表・相馬戦、第1セット11−7の場面でスパイク着地時に交錯し、左足首を捻挫(ねんざ)。これまではピンチサーバーとしての出場経験しかない1年生の冨田直人が急きょ、試合出場を命じられた。もはやこれまでかと思われた絶体絶命のピンチだったが、小磯監督が「期待以上の働き」と称賛した冨田の活躍も手伝い、向かい風は追い風に変わる。誰が主役になるわけでもなく、もともと培われた基本というベースに勢いが加わり、あれよあれよという間に決勝へ。3年生のセッター、山本湧が言った。
「今までは3年チームに1、2年が入っても全く機能せずバラバラだったのに、最後になって不思議なぐらいにピタっとはまりました」
2−2で迎えた鎮西(熊本)との決勝戦・最終セットも、1−5と劣勢の場面から山本がジャンプサーブで崩し、冨田と2年の高橋拓也がブロックで鎮西の強打者たちを仕留め、4点のビハインドを鮮やかな逆転劇で4点のリードに変える。接戦にもひるまず、焦ることもなく、終盤に引っ繰り返され続けてきたチームが、ついにその壁を乗り越える時が来た。
高橋のブロックが決まり、勝者となった選手たちはコートで抱き合い、号泣した。
「追い込まれるほど力強さを発揮した。いいチームになりました」
新たに刻まれる8つ目の星。小磯監督は、また格別の喜びを噛(か)みしめた。
<了>
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