流通経済大柏キラー、久御山の面目躍如=<準決勝 流通経済大柏(千葉) 2(2PK3)2 久御山(京都)>

平野貴也

流通経済大柏は久御山との相性が悪い

流経大柏(赤)は相性の悪い久御山に足元をすくわれ、3年ぶりの優勝はならなかった 【鷹羽康博】

 優勝候補に挙げられていた流通経済大柏が、天敵に足をすくわれた。
 高校日本一に輝いた3年前の初戦、大苦戦を強いられた相手が久御山だった。当時は前半に先制されて追いつき、最後は大前元紀(清水エスパルス)がPKを決めてからくも勝った。次の対戦は、昨年度の高校総体。旅館で食中毒にあたり苦しんだというハプニングがあったとはいえ、このときは現在J1のヴィッセル神戸に所属するFW森岡亮太を擁する久御山に0−5と完敗を喫している。対戦成績は1勝1敗だが、内容面で見れば2試合とも久御山に分があり、流経大柏にとっては非常に相性の悪い相手と言える。

 MF富田湧也は、ピッチの中で感じるやりにくさを、次のように明かした。
「やりづらかったですね。うちは(後ろで跳ね返すのではなく前からの)守備でボールを取ってから攻撃するタイプですけど、その守備ができなかった。2年の時に高校総体で対戦した時もそうだったけど、久御山はボールを取りづらい。(プレスに行ったときに)ある程度、ボールを出してくれたら2人目で狙えるけど、そこをなかなか出してくれない。ここまでのロングボールを蹴ってくる相手との3試合とは違って、今回はプレスが生きるかなと思ったけど、マークをはがされて全部後手になってしまい、良いボールの取り方ができなかった」

 それでも流経大柏はボールを奪ってからは、久御山を自陣ゴールへくぎ付けにして波状攻撃を仕掛けた。2度の同点弾は、どちらも中央で相手を引き寄せてから、タイミング良くサイドへ展開してゴールを奪ったもの。特に後半は持ち味を発揮していた。後半だけで相手の総数と同じ14というシュート数を記録しているところにも、ペースを完全に掌握していた実情が表れている。

 しかし「相手の良さを消すスタイルでやってきた」(本田裕一郎監督)ために試合への入り方がディフェンシブでスロースターターという一面がある流経大柏にとって、2失点というのは誤算だった。相手のペースで過ごす時間が長く、勝ち越すには至らなかった。
 勝った久御山の松本悟監督は、PK戦に突入した時の感想を「勝つと思ったことは1回もなかった。最初から最後まで。助かった、もう数分あったら負けていた。よっしゃ、まだできると思った」と話した。

普段よりもドリブルを多用したことがプレスをかわす結果に

久御山(白)は流経大柏が得意とするショートカウンターに、ドリブル主体の攻撃で対抗した 【鷹羽康博】

 久御山にしてみれば、「パスサッカー」と表現された本来のスタイルとは少々異なる形で臨んだことが、流経大柏との相性の良さをよみがえらせた側面があったのではないだろうか。
 松本監督は「ここまではパスをつないで良い感じで来ているけど、それは山本大地(累積警告により出場停止)がいたからというところがある。今日は久御山らしく、持って運ぶ、自分がやるという気持ちを前面に出して行こうと言った」とドリブル勝負の方針を打ち出したことを明かした。

 結果的にキープ力の高いドリブルが、流経大柏が得意とするショートカウンターを消し去っていた。久御山がドリブルよりもショートパスを多く狙うようであれば、流経大柏のプレスはもっと効いたのではないだろうか。FW坂本樹是は「ガチガチ来るのは分かっていたので、そこを狙っていけと先生に言われていた。来たら、ドリブルでもパスでもポジショニングでも、相手の力を利用するようにして、横に(相手を)かわしてすっと前へ出るようにしていた。ドリブルが効いている部分は大きいと思う。ドリブルがあるからパスがあるし、パスがあってドリブルがある。今までの試合からも悪いイメージはなかった」と攻撃面での手ごたえを語った。

 敗れた流経大柏の本田監督は「追いついて、勝てたなと思ったけど、惜しい試合を落とした。反対の山からは青森山田、静岡学園が上がって来るだろうと予想して、(パスを回すチームに対して)しっかり対策を練っていたが、どうも軽くいなされた気がする」と苦笑した。
 底力で上回る分、久御山に対策を練るということは不要なようにも思われる。しかし、これで苦戦は3度目。パスサッカーの看板の裏で、「持ち過ぎ」と言いたくなるようなドリブルをひとつの特徴として持つ久御山にこそ、対策は必要だったのではないか。2度あることが3度あったのは、偶然ではないだろう。

<了>
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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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