変革期を迎えたサントリー 「揺るぎない意志が大切」=ラグビー

村上晃一

トライ王を争う小野澤「僕、調子上がってきてます(笑)」

――小野澤選手は、11節終了時点で13トライ。2年連続のトライ王に向かっていますね。

畠山 ほんと、取ってほしい。僕がもし独走しても、ザワさんがサポートに来たらパスしますよ。

小野澤 心強いねぇ。でも、ハタケの独走は、ボール持ったらすぐゴールラインだからなぁ(笑)。 

畠山 やるべきアタックを決めて、フィニッシャーのザワさんがトライを量産している。チームが目指すべき戦いができている結果だと思います。

――トップリーグの1シーズンのトライ記録は、北川選手の19です。20を狙いましょう。

小野澤 そうやってね、みんな簡単にプレッシャーかけるんですよ。エディさんも。でもね、僕、調子上がってきてます(笑)。

――畠山選手は小野澤さんをどう見ていますか?

畠山 年齢(32歳)を感じさせない。ウエイトトレーニングでは、自分が調子がいいいときは重いものを上げるけど、調子が悪ければ軽くする。そういう判断もプロだと思います。マネージメントが優れている人ですね。フィールド上ではトライを決めてほしいときに取ってくれます。僕らFWからすればありがたい。頼もしいです。

小野澤 ほめられるのはうれしいなぁ(笑)。ハタケは、おしゃべりなのがいい。FW前5人は寡黙なポジションというイメージだからこそ、そこが盛り上がっているとチーム自体が盛り上がる。一番体を張っている人が、一番元気なのが、一番いい。


――プレーオフはどう勝ち上がりたいですか?

小野澤 確固たるもので勝負する。揺るぎない意志が大切だと思います。開幕で負けているトヨタ自動車には勝ちたい。

畠山 リベンジしたいですねぇ。

――そして東芝に勝って優勝すれば気持ちがいいでしょうね。

畠山 東芝には去年のプレーオフでも負けています。でも、どのチームが残っても盛り上がりますよ。その中で勝ちたい。

――今年のサントリーはルーキーも頑張っていますね。

小野澤 今年は何をするかが明確なのでチャレンジしやすいと思いますよ。あと、エディさんが細かく気を配ってくれていますね。ミーティング中も、『こういうときは9番がこうして』というような指示をするときは、9番全員の名前を呼ぶんですよ。そういうことによって、チームの一員だという意識も高まると思う。

2011年W杯では「結果を取りにいく。勝ちたい」

――さて、2011年はワールドカップです。この質問をすると、ほとんどの選手が「まだ選ばれるかどうか分かりません」と言います。でも、お二人は大丈夫でしょう。

小野澤 いやいや、WTBもほんとに分からないですよ。ハタケは安泰だろうけど。

畠山 何を言ってるんですか。ザワさんこそ決まりじゃないですか。ただ、JK(ジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチ)は、『(調子に)波のある選手は使いたくない』と言っています。トップリーグでも安定したパフォーマンスをしないと評価が下がる。それを理解しているからこそ、どの選手も、『分からない』と言うのだと思いますよ。

小野澤 おじさんを切るのは簡単だからなぁ……。

畠山 またまた〜。僕はワールドカップを経験していないから何も言えませんが、経験している人はチームにとっても重要な存在だし、JKもそれは理解しているでしょう。ザワさんには経験を伝える役割もあります。当確です!

小野澤 おっ、当確出ました。

――小野澤さん、ワールドカップはやっぱり違いますか?

小野澤 う〜ん。ほかと違うということを自分たちでつくり上げてしまっている気もするんですよ。そうではなく、いい準備をして、結果を取りに行く大会だととらえたい。自分自身3回目の大会はそうありたい。やる以上は、ほかと同じ試合。そこまでいけたらいいチャレンジができる。そうありたいという思いが2007年(フランス)大会以降、僕を代表へ執着させたと思うんです。だから今回は、結果を取りにいく。勝ちたい。

畠山 今のは、経験しなくては言えない言葉ですね。

――ワールドカップに対して何か楽しみにしていることはありますか?

小野澤 ない。勝ちたい。

畠山 未経験者から言わせていただくと、ニュージーランド大会というのは、きっとスタンドが満員になると思うんですよ。そういう中で試合ができること、それは純粋に楽しみです。

小野澤 僕はね、まず全員が最初に『勝ちたい』っていう雰囲気に持っていきたいな。

――最後にもう一度トップリーグのことを。2年連続のトライ王宣言で最後、締めてもいいですか?

小野澤 いいですか? ではなく、僕は毎年狙っているんですよ。去年も最終2節まで分からなかったし、緊張感あります。

畠山 昨季最後のザワさん、気合入ってましたもんね。異常に声出していたし(笑)。

小野澤 試合前に、『僕、緊張してます』って言っちゃったもんね。

――ほかの個人賞については。

畠山 ベストフィフティーンには選ばれたいですけど、あれはスクラムというより、理想のチーム像みたいな感じで選出されるところがあるでしょう。

小野澤 えっ、そういう感じだったら選ばれなくていいの? 俺は、どんなチーム編成をしても『小野澤は選ぶね』って言われたい。

畠山 それはそうですね。

小野澤 どの監督からも選ばれたいよ。

――実際、歴代日本代表監督に選ばれているじゃないですか。

小野澤 シアワセです(笑)。僕ね、ベストフィフティーンが、欲しくてたまらない。

畠山 僕だって、本当は欲しくてたまらないですよ。欲しいです!

<了>

選手プロフィール

小野澤宏時 / Hirotoki Onozawa
1978年3月29日、静岡県生まれ。180cm、85kg。ポジションWTB/FB。静岡聖光学院高、中央大を経てサントリーサンゴリアス入り。トップリーグ通算トライ数は82(第11節終了時点)で最多記録を更新中。日本代表キャップ58は歴代3位タイ。 

畠山健介 / Kensuke Hatakeyama
1985年8月2日、宮城県生まれ。178cm、116kg。ポジションPR。仙台育英高、早稲田大を経てサントリーサンゴリアス入り。高校時から各世代代表に選出され、トップリーグでも2年連続ベストフィフティーンに選出。日本代表キャップ15。

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著者プロフィール

1965年、京都府生まれ。京都府立鴨沂高校、大阪体育大学卒。大学時代は、FBとして活躍。85年、同志社大学の関西大学リーグの連勝記録を71でストップさせた試合に出場。翌年、東西学生対抗の西軍FBに選出される。卒業後、ベースボールマガジン社に入社。90年から97年まで「ラグビーマガジン」編集長。現在はフリーのラグビージャーナリストとして、多くの雑誌に執筆。「JSPORTS」のあらゆるカテゴリーの解説をこなしている。編集者としても、ジャンルにこだわらずに単行本を手がける。著書に、大学時代の恩師であり、元日本代表名ウイング坂田好弘氏の伝説を追った「空飛ぶウイング」などがある。

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