バルセロナとインテルが2010年に残した足跡

モリーニョvs.バルセロナの行方

W杯MVPのフォルラン(中央)、得点王のミュラー(左)、最優秀GKのカシージャス。南アフリカではさまざまな驚きがあった 【写真:AP/アフロ】

 今日のバルセロナの優位性は、インテルの主将であるハビエル・サネッティも「世界一のベストチーム」と認めている。しかも、クラブW杯のタイトルを獲得した直後に語っているのだ。自らのクラブが世界一となり、しかもインテルがCL準決勝でバルセロナを下しているにもかかわらずである。

 いずれにしても、インテルの戴冠はモリーニョのような有能な監督が、多大なる労力をかけてチームを作り上げた成果だと言える。すなわち守備が堅く、カウンター主体でなるべく中盤を省略してゴールを狙う戦術だ。この対極にあるのが、ジョゼップ・グアルディオラが目指すサッカーである。ショートパスを多用し、ボールを支配しながら手数をかけて敵陣を目指す。そうして相手のディフェンスを崩した上で、フィニッシュを狙うのだ。また、高い位置でのプレッシング、攻守の切り替えの早さも特筆すべきものがある。

 前述のように、バルセロナと現在のモリーニョのチーム、レアル・マドリーとの今季初の対決は、5−0でホームのカタルーニャのチームに軍配が上がった。リーガ・エスパニョーラのタイトル争いは既に両者の戦いに絞られた感があるが、マドリーのチームにとってはかなり難関だと言わざるを得ない。

W杯での驚き

 南アフリカでのW杯はポジティブとネガティブ、両方の驚きをもたらした。まずポジティブな面から言うと、ファイナリストとなったスペインの華麗なプレー、堅実なオランダの戦いぶりを除くと、ケディラ、エジル、ミュラーといった若き柔軟なプレーヤーを数多くそろえた新生ドイツが印象に残った。もはや、ドイツは世代のヒエラルキーが完全に崩壊したと言えるだろう。
 そのほか、カバーニ、スアレス、W杯のMVPフォルランという3トップを擁したウルグアイ、ベスト8のパラグアイなどは、興味深い進化とその可能性を示した。そのパラグアイに決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に敗れ、8強にわずかに及ばなかった日本も、これまでの努力がようやく実ってきたことを感じさせた。

 その一方で、W杯では伝統国の失墜も目立った。フランス(チーム内のスキャンダルまで発覚した)、イタリアというかつての優勝国は、今大会では比較的くみしやすいグループリーグに入ったにもかかわらず、決勝トーナメントに進出することができなかった。また、メッシを筆頭にビッグネームを多数抱えるアルゼンチンはチームバランスが悪く、メジャーからマイナーな存在となった。南米の雄ブラジルも優勝候補の一角だったが、準々決勝のオランダ戦では、説明し難いちぐはぐさを露呈した。ポルトガルもC・ロナウドらいい選手を抱えながら、どこか生ぬるさが抜け切れなかった。
 また、今大会は初のアフリカ大陸でのW杯開催となったが、ホスト国の南アフリカをはじめとする出場6カ国のうち、グループリーグを突破したのはガーナただ1カ国のみ。そのガーナも準々決勝でウルグアイの前に屈した。

 最後に、ポルト・アレグレの“インテル”(インテルナシオナル)について言及しておきたい。チンガやソビスらのタレントに加え、ギニャス、とりわけダレッサンドロ(10年の南米最優秀選手に選ばれている)といったアルゼンチン人選手を補強し、ブラジルのチームは昨年、コパ・リベルタドーレスを制して南米の主役に躍り出た。だが、驚くべきことに、インテルナシオナルはクラブW杯の準決勝でコンゴ民主共和国のマゼンベに敗れ、3位に甘んじたのだった。

<了>

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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