バルセロナとインテルが2010年に残した足跡

4冠を成し遂げたインテルだが……

昨年は4つのビッグタイトルを獲得したインテルだが、その評価は決して高くはない…… 【写真:Action Images/アフロ】

 2010年のサッカー界は、インテルがクラブワールドカップ(W杯)で優勝し、1965年以来の世界王者になりながら、ラファエル・ベニテスが解任されるという皮肉な結末で幕を閉じた。インテルがこの年に成し遂げた偉業に、スペイン人監督はほとんどかかわっていなかったからだ。その最大の功労者、ジョゼ・モリーニョは今、レアル・マドリーのベンチに座っている。このポルトガル人指揮官は09−10シーズンのCL準決勝で、イタリアの雄を率いてバルセロナを敗退に追いやった人物だ。

 サッカーとは不思議なもので、結果を残したとしても、それが栄誉に値するという合意を得られないことが往々にしてある。表向きには、そのチームがすべてを獲得したとしてもだ。数字の上では、インテルは10年にスクデット(セリエA優勝)、コッパ・イタリア、チャンピオンズリーグ(CL)、クラブW杯という4つのビッグタイトルを手にした。だが、誰もが知っている。ベストクラブはバルセロナだということを。

 だが当時、モリーニョが率いていたインテルは、敵地カンプ・ノウでバルセロナに抵抗した。CL準決勝、ミラノで行われた第1戦を3−1で制したインテルは、第2戦は0−1で敗れたものの、決勝へと駒を進めた。ここ数年のバルセロナは常に素晴らしいゲームを披露しており、そのプレーの質において他の追随を許さない。その証拠に、昨年11月29日に行われたレアル・マドリーとのクラシコ(伝統の一戦)では――ライバルを率いるのは半年前に苦渋をなめたモリーニョだったが――これ以上ない内容で、5−0とレアル・マドリーを粉砕した。それは、ほぼ完ぺきな試合を行うにはどうすればいいか、というお手本として記憶されるような戦いぶりだった。

世界最高のチーム、バルセロナ

 バルセロナの卓越した力は、レアル・マドリーという最強のライバルがいるリーガ・エスパニョーラにおいて、高いレベルで連覇を果たしていることからもうかがえる。しかも、直近5試合の直接対決で5連勝。バルセロナが16ゴールを挙げているのに対し、レアル・マドリーに許した得点はわずかに2である。しかも、このカタルーニャのチームは南アフリカで行われたW杯に8人のスペイン代表を送り込み、チームの初優勝に大きく貢献した。トロフィーを勝ち取ったのはスペイン代表ではなく、実際にはバルセロナだという風刺もあるくらいだ。

 もちろん、メンバーはバルセロナの選手だけではないし、ビデンテ・デルボスケ率いるスペイン代表が世界王者になる要素はそろっていた。2年前のユーロ(欧州選手権)を制し、チームに勝ち癖がついてきたことも挙げられるだろう。だが、チーム戦術のベース、ボール扱いの哲学などは、まさしくカタルーニャのチームのそれである。基盤がしっかりしていたことで、あとの要素は自然とついてきたと言える。

 その証拠に、FIFA(国際サッカー連盟)ワールドプレーヤーとバロンドールが統合された10年の年間最優秀選手賞の最終候補3人すべてが、バルセロナから選出された。1月10日にはシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、そして09年の受賞者、アルゼンチン人FWリオネル・メッシのうちから世界最高の選手が生まれることとなる。
 メッシはW杯では結果を残せなかったが、その天才的なプレー、才能に議論の余地はないだろう。シャビはピッチを見渡す視野の広さが突出しており、正確でシャープなステップを刻んでポジションを確保しながら、決定的なスルーパスを通すことができる。バルセロナにもスペイン代表にも欠かせない存在である。イニエスタについては、W杯決勝でオランダを破る決勝ゴールを決めたのに加え、相手を混乱に陥れることができるスキルを持った選手と言える。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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