インターハイ後の不調を乗り越えた滝二の“2枚看板”=<1回戦 駒場(東京A) 1−6 滝川第二(兵庫)>

安藤隆人

“強力2枚看板”がインハイ後にぶち当たった壁

直接FKを含むハットトリックを達成した樋口(右) 【たかすつとむ】

 試合を決めたのは、背番号10を背負うチームのエースストライカー・樋口寛規と、キャプテンの浜口孝太の2人だった。駒場対滝川第二の一戦、この大会を相当の決意を持って挑むストライカーたちの意地がさく裂した。

 滝川第二は樋口と浜口の2トップが“2枚看板”で、彼らのスピードアタックを軸に、ボランチの谷口智紀、攻撃的な右サイドバックの濱田量也、攻撃センスのある右MF本城信晴がサポートをする攻撃が魅力。だが、この試合、谷口が兵庫県予選決勝で退場処分を受け、この試合に出場できなかった。
 そこで谷口の代役に白羽の矢が立ったのが樋口だった。キープ力がある樋口は、元々はボランチを本職とし、昨年は突破力を評価され、サイドハーフもこなしていた。だが、それ以上に彼の決定力に着目した栫裕保監督は、彼をFWにコンバートし、浜口と組ませることで、チームの“強力2枚看板”が誕生した。
 インターハイではこのコンビが爆発。2人で絶妙なタイミングで裏を取り、果敢に攻め込んでいき、準決勝では樋口がハットトリックを達成するなど、2人でゴールを量産。準優勝の立役者となった。しかし、ここから彼らは苦しんだ。

 ゴールが奪えない。高円宮杯全日本ユースでは初戦の流通経済大柏戦で、樋口がゴールを決めたが、1−7の大敗。そして清水エスパルスユースに0−2、第三戦の浦和レッズユース戦は樋口の2ゴールで2−0で勝ったが、浜口からはゴールが生まれず、グループリーグ敗退を喫した。さらに選手権予選では、今度は樋口が大ブレーキ。大会を通して1ゴールも挙げることができなかった。決勝では報徳学園に1−1のPK戦から、何とか代表権だけは勝ち取るが、この試合で2トップは数多くの決定機をフイにし、ノーゴール。PK戦では樋口が外すなど、貢献どころか足を引っ張ってしまった。

慢心やおごりを振り払い、2枚看板が復調

2得点と活躍した浜口。大勝に貢献した 【たかすつとむ】

「ちょっとおごっている部分があった。調子が良くないから動けないのではなく、調子が良くないからこそ、動かないといけない。慢心がある」と栫監督は、決勝戦の夜に樋口の携帯を鳴らし、「お前、ええ加減にせいよ」と、ブレーキを起こしたエースを一喝した。決勝戦後に大号泣をした浜口もまた、責任を感じていた。

「自分たちが点を取らないとチームに大きな迷惑が掛かる」

 自覚を取り戻した彼らは、選手権初戦で大暴れした。前述したように、樋口はボランチスタート。浜口は2年生FW筒井亮磨と2トップを組んだ。立ち上がりから浜口は、果敢に相手のギャップに飛び出して、シュートを放つと、樋口も2列目から果敢に前線に飛び出して、ゴールに迫った。2人の気持ちはまっすぐにゴールに向けられていた。

 そして19分、ロングパスに抜け出したMF香川勇気がGKと交錯しながらもループシュート。ゴール手前に落ちてきたボールに詰めたのは浜口。ブロックに来るDFにひるむことなくヘッドをたたき込んだ。このゴールに触発されたのか、今度は樋口が爆発。前半ロスタイムに浜口とのワンツーから豪快に右足でミドルシュートを逆サイドネットに突き刺すと、49分には浜口の縦パスから筒井を経由し、再び樋口が今度は左足でニアサイドに豪快に突き刺した。51分には浜口が左CKから合わせると、1点を返された後の62分には樋口が左30メートルの位置から、強烈な弾丸FKを突き刺し、ハットトリックを達成。66分に香川が6点目を挙げ、2トップが計5ゴールをたたき込んで、初戦を大勝で飾った。

「予選は情けない結果だった。だからこそ、全国で点を取りたかった。これまで打っていたところで打てなくなったり、シュートが上に行くようになっていたので、もう一度ゴールへの意識とシュートを考え直すようになった。今日、遠い位置から抑えて打てたのが大きかった」(樋口)

 インターハイのころの自分たちを思い返すように、慢心やおごりを振り払い、ついに目覚めた“強力2枚看板”が、最高の結果でスタートダッシュを切った。インターハイの快進撃よ再び。浜口と樋口の強力デュオが、正月の西が丘で再び牙をむく。

<了>
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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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