プロバスケット「bjリーグ」、新規参入3チームの通信簿
bjリーグ初の日本代表選手としてプレーする石崎巧は、今季からリーグに加わった島根の大黒柱として活躍する 【Photo:中西祐介/アフロスポーツ】
集客に関してはその他のプロスポーツ同様、bjリーグも苦戦しているが平均観客動員が2000人を上回っているチームも複数ある。仙台89ERSや、新潟アルビレックスBBは複数のプロスポーツがひしめきあうエリアで安定した観客数を誇るタイプ。また、地方都市では競合するメジャースポーツやチームが少ないこともあり、地元のバックアップを受けて集客を伸ばすチームが多い。こういったチームは琉球ゴールデンキングスが代表格だ。そんな中、現在、リーグトップとなっているのが、新規参入の秋田ノーザンハピネッツだ。
バスケット王国に根付くか? 〜秋田ノーザンハピネッツ〜
「自分たちの前座だった能代工高の試合には3000人ほどの観客が入ったが、JBLの試合になると観客はゾロゾロと席を立ち始め、あっという間に1000人ほどに減ってしまった。その経験があったので、能代工高のバスケットは見ても、プロバスケットに観客が入るとは思っていなかった。秋田ノーザンハピネッツの集客には正直苦戦するだろうなと……」(長谷川)。しかし蓋を開けてみると、ホーム開幕戦の16日に3152人、17日には3182人の観客が訪れ、会場を秋田のチームカラーであるピンク一色に染めた。12月4、5日には能代工高のおひざ元、能代市総合体育館で初のホーム試合を行ったが、こちらも立ち見客が出るほどの盛況ぶりだった。
順調な船出を切った秋田だが、bjリーグの河内敏光コミッショナーは「バスケットボール人気の高い秋田ならではの厳しさもある」と指摘する。「バスケが盛んな地域であれば、バスケの見方も知っている。戦力が整わない新規チームに、いきなり優勝を目指して欲しいとは思わないだろう。しかし、負け試合でも最後まで全力でプレーする姿がなければ、ブースター(ファン)はすぐに離れてしまう」。その危機感は長谷川自身も感じている。「ただ勝てばいいというものじゃない。会場にきて良かった。応援して良かったという試合でないと秋田には根付かないと思う。今は負け試合でも最後まで応援してくれる。このブースターの思いを裏切ってはいけない」と、毎試合気を引き締めて臨んでいるという。
チームが地域に根付くには、行政のバックアップ、スポンサーの支援、そしてなによりも勝敗に関わらず「おらがまちのチーム」を愛してくれるブースターの存在が不可欠。秋田にはもともとバスケット人気を支えてきた能代工高というブランドがある。チームの看板でもある長谷川はもちろん、能代工高出身の信平優希、菊地勇樹の活躍が、会場をさらに盛り上げてくれるだろう。しかし現時点で秋田チームの日本人選手の主力は水町亮介、庄司和広選手。また新人ながらもプレイングタイムを増やし、めきめきと頭角を現している高卒ルーキー澤口誠を含め、彼らは秋田出身でもなければ、能代工高OBでもない。育成という観点からも能代ブランドを融合させたチーム作りが、地域に根付く礎となる。
ファン獲得に向けてそれぞれの挑戦 〜島根スサノオマジック、宮崎シャイニングサンズ
一方、新規3チームの中で最も集客に苦戦しているのは宮崎だ。県内初のプロスポーツチームということで、地元は盛り上がるかと思われたが、現実は厳しい。チームが県庁所在地のある宮崎市ではなく、都城市にあることも影響しているが、宮崎ならではの超えなければならない大きな壁がある。宮崎といえばプロ野球、Jリーグのキャンプ地としても有名。また温暖な気候ということもあり、プロゴルフなど、さまざまなスポーツイベントが年間を通して開催される。地元にはプロチームがなくとも、多くのメジャースポーツに触れる機会がたくさんあるのが、宮崎なのだ。
したがって、いくら県内初のプロチームであっても、県民の興味を引くのはなかなか大変だ。こうしたメジャースポーツイベントを相手にプロモーション活動をどう展開するか、宮崎にとって今後の大きな課題といえる。「来シーズン以降、ホームゲームと大型スポーツイベントがかぶらないように試合スケジュールを組むことも必要」と、河内コミッショナーがいうように、うまく共存していくことが、地域に根ざす上では重要だ。開幕して約2カ月。新規チームの挑戦はまだまだ始まったばかりだ。
<了>
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