2012年はユーロと五輪に出たい=スペイン代表FWフアン・マヌエル・マタ

工藤拓

15歳でレアル・マドリーと契約、そしてバレンシアへ

出場時間こそ短かったものの、22歳にしてW杯制覇を成し遂げた 【Getty Images】

――君個人の話も聞きたい。君のお父さんもサッカー選手だった。どんな選手だったか知っている?

 うん、ビデオで見たことがあるから。彼は左ウイングで、ブルゴス、サラマンカ、そして僕が育ったオビエドなどでプレーした。妹と僕は当時、父がプレーしていたブルゴスで生まれたんだ。

――ブルゴスにいたのは3歳までで、その後お父さんの移籍でオビエドに移住したんだよね?

 まだ幼かったからブルゴスのことはあまり覚えていないんだけど、自分が生まれた町として愛着を持っている。15歳まで過ごしたオビエドには、学校やサッカーを始めたクラブのことなど、少年時代の思い出が詰まっている。家族もほとんどアストゥリアスに住んでいるしね。サッカーを始めたのはフレスネダというチームで、その後フベントゥー・エスタディオ、そしてレアル・オビエドでプレーした。

――そして15歳の時にレアル・マドリーと契約した

 レアルでは19歳までプレーした。最初は苦労したよ。15歳で家を出たわけだからね。でも次第に多くの友だちができ、選手としても重要な時期を過ごせた。

――ネグレド、グラネロ、ボルハ・バレーロらがいた、当時のBチームは良いチームだったね

 他にもセルヒオ・サンチェス(現セビージャ)、ミゲル・トーレス(現ヘタフェ)など、現在1部でプレーしている選手がたくさんいたね。でも(2部から3部へ)降格しちゃった。

――しかし、その中で現在レアルのトップチームにいるのはグラネロだけだ。なぜクラブは才能あるカンテラーノ(育成組織出身者)たちを信用しないのだろう?

 レアル・マドリーのように要求の高いクラブで、カンテラの選手がトップに上がるのは難しいことだよ。あまり時間を与えてくれないから、手にした出場時間で良いプレーを見せなければならない。レアルは常に、最高の選手を獲得し続けるクラブだから、カンテラの選手が手にできるスペースはほとんどない。それは尊重すべきクラブの方針だ。確かなのは、トップリーグにはレアルのカンテラ出身選手がたくさんプレーしているということさ。

――君も他のカンテラーノと同様にクラブを去った。バレンシア移籍は正解だったと今でも思う?

 バレンシアに来てからはすべてがうまくいっているからね。4年間もビッグクラブでプレーして、タイトル獲得を経験して、代表ではコンフェデ杯やW杯に出場できた。この歳でこれ以上を望むことなどできないと思うよ。

――現在交渉中らしいけど、バレンシアとの契約更新は近い?

 長いこと話し合いが続いてきたけど、うまく進んでいる。もうすべてが解決するのに時間はかからないと思うよ。

――バルサなどのビッグクラブに興味を持たれているけど、他のクラブやリーグで挑戦したい気持ちは?

 今のところリーガ・エスパニョーラ以外でプレーすることは考えていない。このリーグが好きだし、僕は今もビッグクラブでプレーしている。まだ移籍は考えていないよ。

目下の目標はロンドン五輪出場

――09年にフル代表デビューし、1年後にはW杯優勝。その若さでものすごい経験をしているね

 20歳でフル代表デビューは若すぎるよね。21歳でコンフェデ杯に出場し、22歳でW杯王者になった。これはスペインサッカー界にとって歴史的な出来事であり、その一員となれたことは恵まれていると思っている。

――代表でのプレーはバレンシアとどう違う?

 代表は実践するのが難しいスタイルでプレーしている。非常にレベルの高い選手がそろっているからこそできるんだ。常にボールを支配し、多くのゴールを決めている。実際にW杯で優勝したし、世界最高のサッカーであり、まねしたり実践したりするのは難しい。バレンシアは今いる選手の特性を考慮し、個々の能力を引き出すサッカーをしている。

――ほかにイニエスタ、ペドロ、ヘスス・ナバス、カソルラ、パブロらがいる君のポジションは、代表で最も競争が激しい。その中で何が自分の武器だと考えている?

 第一に、W杯に出場した選手であっても所属クラブで良いプレーを続けなければいけない。その上でチャンスを生かすこと。僕は幸運にも、代表に呼ばれてすぐにゴールを決めることができた。すでに3ゴール決めているけど、今後も監督が与えてくれるチャンスを生かせるよう準備しておかなければいけない。

――先日はU−21代表のキャプテンとして欧州選手権プレーオフを戦った。他の選手とはレベルが違うプレーを見せていたね

 まだU−21代表に参加できる歳だからね。僕が参加したのはみな重要な試合で、勝利が求められていた。幸運にもチームを助け、勝つことができたけど、僕はチームの一員としてプレーしただけで、自分が他より上の立場だとは思っていないよ。

――U−21代表の目標はロンドン五輪。スペインは2大会連続で五輪出場を逃しているけど、五輪の重要性はどうとらえているのかな?

 僕は五輪が世界最大のスポーツイベントだと思っている。各競技における世界最高のアスリートたちが一堂に集まるからね。ユーロ(欧州選手権)とW杯を制したスペインサッカーは現在最高の時代を過ごしている。だから五輪にも出場してしかるべきだと思っている。

――個人的にW杯優勝を経験したことで、U−21代表でのプレーや五輪出場へのモチベーションは落ちてはいない?

 それはない。五輪はモチベーションをかき立てるには十分すぎる重要な大会だ。それに五輪を目指すU−21代表は、希望と意欲に溢れていた。僕がプレーした4試合はすべて勝てたし、あのチームに参加できたことにはとても満足しているよ。

――では当然、ロンドン五輪には出たい?

 素敵な経験となるだろうね。選手として五輪に出場することは、人生における唯一無二の出来事だよ。

――でも2012年夏にはユーロもあるけど

 うーん、まだ分からないな。2つの大会は1カ月ずれているから、僕が決められるのなら両方に出たい(笑)。でも、まだ五輪は出場も決めていないから、まずは出場権を確保しないとね。

――今季の個人的な目標は?

 バレンシアでは継続してプレーし、多くのゴールを決め、良いシーズンを送りたい。リーガではCL出場権を確保すること。国王杯では3年前のように優勝を狙いたい。代表では今後も監督の構想に入り、キャップ数を増やしていきたい。

――今日はありがとう。最後に日本のファンにメッセージを

 素敵なリーグであるリーガ・エスパニョーラに、そしてバレンシアに注目して下さい。良いシーズンとなるよう頑張っていますので。みんなに厚い抱擁を贈ります。

<了>

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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