元世界王者の意地! 門脇が2年9カ月ぶり勝利で超新星撃破 猿丸が絶対王者に挑戦状、堀口は逆転KOでMVP=修斗

長谷川亮

門脇(上)が元世界王者の意地を見せつけるテクニックで超新星・矢地を撃破、連敗も脱出だ 【t.SAKUMA】

 東京都内では今年最後の開催となるプロフェッショナル修斗公式戦、「THE ROOKIE TOURNAMENT 10 FINAL」が18日、新宿FACEで行われた。

 各階級の新人王決定トーナメント決勝戦が行われたこの日だが、メーンイベントには昨年のライト級新人王にして09年度MVPの矢地裕介が登場。いまだ底の見えない強さを発揮する“超新星”矢地だが、この日対戦となったのは対照的に世界王座戴冠以降4連敗と不振の続く門脇英基。上り調子の矢地に対し後のない門脇と、対照的な組み合わせとなった。

 しかし、まさに崖っぷちというべき状態で臨んだ試合で、門脇は意地と底力を見せる。
 1ラウンドと2ラウンドにそれぞれテークダウンを奪うと、1ラウンドにパスしてサイドポジションへつき、2ラウンドにはクロールのようなフォームで右パウンドを打ち込み優勢に展開。かつて佐藤ルミナも極めた寝技師ぶりは健在でグラウンドで主導権を取り、20−19、20−18、20−18の3−0で判定勝利した。
 門脇は実に08年3月以来、実に2年9カ月ぶりとなる白星で、連敗脱出をもって2010年を締めくくった。

猿丸が圧巻の逆転KO劇

大逆転のKO勝利を飾った猿丸(左)、いざ世界王座に挑戦だ 【t.SAKUMA】

 セミファイナルでは世界ランク1位の猿丸ジュンジvs.世界ランク2位のATCHアナーキーというフライ級トップランカー対決が実現。“絶対王者”として君臨する世界王者ランバー・ソムデートM16への、“次期挑戦者決定戦”というべき一戦を争った。
 ともに軽量級離れした強打を持つ両者だが、先手を取ったのはアナーキー。猿丸はプレッシャーを掛けアナーキーをロープ・コーナーに追い詰めるのだが、ここでアナーキーがサウスポーから放った左ストレートがズバリ。これが効いてしまった猿丸は熱くなり逆に打ち合いを仕掛けるのだが、アナーキーは再び左フックでヒットを上げる。
 猿丸は挽回への焦りからかビッグパンチを振るうものの、被弾のダメージが抜けてなく自らのパンチでバランスを崩してしまう。
 ピンチであるのは誰の目にも明らかな猿丸だったが、プレッシャーは落とすことなくアナーキーをコーナーに詰め、右ストレートを振るってクリーンヒット。アナーキーを前のめりに豪快に打ち倒し、圧巻・逆転のノックアウト勝利となった。

「(アナーキーのパンチが)すげー効きました。あそこで当ててなかったら俺の負けでした」と試合後、リング上からマイクで語った猿丸。
 若干頭がボーっとするようだったが、「こんなボロボロでデカいこというのも何なんですけど……あのチャンピオンも俺のパンチが当たったら倒れるかもしれないよ。面白いでしょ? 次こそはタイトルマッチをやれると思うので、俺の拳で倒します」と王者ランバーとの対戦を今回もアピールし、意気揚々とリングを後にした。

堀口がMVP獲得、憂流迦はライト級新人王

連打で逆転KOを決めた堀口(中央上)がMVPを獲得 【t.SAKUMA】

 この日決勝が行われたのは、フライ・バンタム・フェザー・ライト・ウェルター・ミドルの6階級。そのレベルの高さとファイナリスト2人の拮抗した力関係を示すように、大会序盤は2−1のスプリットデシジョン、2試合連続の延長戦など接戦が続出。
 しかし、第4試合(バンタム級)でランボー宏輔がその名の通りのアグレッシブ&破壊力あるファイトでまず本間祐輔をノックアウト(右ストレート)。
 続く第5試合(フェザー級)ではKRAZY BEEの堀口恭司が1ラウンドはペースを握られながら、2ラウンド開始すぐにダッシュしての右ストレートを突き刺してダウンを奪い、そこから連打をまとめて逆転KOを決めた。
 新人王最後の一戦となる第6試合(ライト級)には“若き寝技師”として知られる佐々木憂流迦(うるか)が登場。アマ時代の対戦では敗北しているパラエストラ仙台の齊藤曜と対戦した。
 テークダウンの強い齊藤に下からの展開が多くなった憂流迦だが、さすがの寝技師ぶりを発揮し、1ラウンドにフロントチョークでのキャッチ、2ラウンドにはマウントからバックポジションと攻めていく。結果、グラウンドでコントロールした憂流迦が評価を得て3−0の判定勝ち。ライト級新人王に輝いた。

 そして大会後に行われた新人王各賞発表では、敢闘賞がランボー、技能賞が憂流迦、MVPが堀口という結果に。中でも堀口が所属するKRAZY BEEは、2008年の田村一聖、2009年の矢地裕介に続き、これで3年連続MVPを輩出するという快挙となった。

環太平洋王者・土屋、1.10後楽園で元米国金網王者戦

ハービーとの対戦が決まった土屋は、勝利と世界挑戦アピールを約束 【t.SAKUMA】

 第7試合終了後には、環太平洋ライト級王者・土屋大喜が登場。11年の新春第1弾大会(1月10日、東京・後楽園ホール)で元キング・オブ・ザ・ケージ王者であるトニー・ハービーと対戦することが発表された。
 過去には「バーリ・トゥード・ジャパン 09」で五味隆典を苦しめたハービーだが、今回は階級を落とし土屋と体重を合わせての試合となる。

 思わぬマッチメークに「ビックリした」と語る土屋だが、「やることは決まっているし、終わって言うことも決まっているので期待してて下さい」と力強いコメント。
 現在世界ライト級1位にランクされ、王者・日沖発への挑戦が期待されながら課題としていたKOができなかったため11月の試合ではアピールを自粛した経緯を持つ土屋は、「いつも通り動いて動いて会場を沸かせたいと思います。1月はいい勝ち方をして、言いたいことを言いたいと思うので、よろしくお願いします」と話し、最終関門突破ならびに世界挑戦アピールを約束した。

 修斗きっての“名勝負製造機”となりつつある土屋。はたしてハービーに会心の勝利を上げ、世界王座奪取へ弾みをつけることができるのか。

 その他、大会の試合の結果は以下の通り。

■プロフェッショナル修斗公式戦「THE ROOKIE TOURNAMENT 10 FINAL」
12月18日 東京・新宿FACE

<メーンイベント(第10試合)ライト級 5分2R>
○門脇英基(和術慧舟會東京本部/同級世界6位・環太平洋3位)
(2R判定3−0)
●矢地祐介(KRAZY BEE/同級2009年新人王・MVP)
※20−19、20−18、20−18

<セミファイナル(第9試合)フライ級 5分3R>
○猿丸ジュンジ(シューティングジム横浜/同級世界1位)
(1R3分58秒 KO)
●ATCHアナーキー(パラエストラ東京/同級世界2位)

<第8試合 フェザー級 5分3R>
○徹肌ィ朗(和術慧舟會ネイキッドマン柔術/同級世界5位・環太平洋5位)
(3R判定2−0)
●山内慎人(GUTSMAN・修斗道場/同級環太平洋7位)
※29−28、29−28、28−28

<第7試合 ライト級 5分2R>
●柳澤雅樹(パラエストラ東京)
(2R判定3−0)
○田中半蔵(シューティングジム横浜)
※20−17、20−18、20−18

<第6試合 ライト級 5分2R 2010年度新人王決定トーナメント決勝戦>
●齊藤曜(パラエストラ仙台)
(2R判定3−0)
○佐々木憂流迦(和術慧舟會駿河道場)
※20−17、20−18、20−18

<第5試合 フェザー級 5分2R 2010年度新人王決定トーナメント決勝>
○堀口恭司(KRAZY BEE)
(2R0分43秒 KO)
●赤尾セイジ(NEX−SPORTS)

<第4試合 バンタム級 5分2R 2010年度新人王決定トーナメント決勝>
○ランボー宏輔(パラエストラ千葉)
(1R4分52秒 KO)
●本間祐輔(パラエストラ札幌)

<第3試合 ウェルター級 5分2R 2010年度新人王決定トーナメント決勝>
○下石康太(MMA 修斗ジムBLOWS)
(延長ラウンド1分24秒 スリーパーホールド)
●アキラ(久我山ラスカルジム)
※本戦判定は18−17(アキラ)、18−18、18−18でドロー

<第2試合 ミドル級 5分2R 2010年度新人王決定トーナメント決勝>
○井上雄策(PUREBRED川口REDIPS)
(延長判定3−0)
●住村竜市朗(トリニティーサンズ)
※本戦判定は19−19、20−19(井上)、19−19でドロー

<第1試合 フライ級 5分2R 2010年度新人王決定トーナメント決勝>
○マッチョ“ザ”バタフライ(総合格闘技道場コブラ会)
(2R判定2−1)
●オニボウズ(総合格闘技ゴンズジム)
※20−19(オニボウズ)、20−18(マッチョ)、20−18(マッチョ)
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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