ブエナビスタまさか降着、ローズキングダム執念のJC制覇!
武豊(右)とローズキングダムが執念の走りでJC制覇を手繰り寄せた 【スポーツナビ】
同馬はGI日本ダービー、GI菊花賞と連続2着だったウップンを晴らす勝利で、昨年2歳時のGI朝日杯フューチュリティステークス以来となるGI2勝目を達成。良馬場の勝ちタイムは2分25秒2。
また、騎乗した武豊は、1999年スペシャルウィーク、2006年ディープインパクトに続く同レース3勝目。これはランフランコ・デットーリに並ぶJC最多勝タイ記録。さらに、デビュー2年目の88年にGI菊花賞をスーパークリークで制して以来、今回の勝利で23年連続のJRA・GI勝利を達成した。
なお、ローズキングダムを管理する橋口弘次郎調教師は、05年にハーツクライでハナ差の悔しい2着はあったものの、今回がJC初制覇となる。
一方、今年のGI凱旋門賞2着馬で蛯名正義が騎乗した2番人気ナカヤマフェスタ(牡4=二ノ宮厩舎、父ステイゴールド)は14着と大敗。ローズキングダムからハナ差の3着にはマキシム・ギュイヨン騎乗の8番人気ヴィクトワールピサ(牡3=角居厩舎、父ネオユニヴァース)が入った。
後味の悪いレースに武豊、橋口調教師ら胸中複雑……
心中複雑な勝利に表彰式でも橋口調教師(左)の表情は硬いまま 【スポーツナビ】
JRA・GIではシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、そしてウオッカに続く史上2番目の勝ち鞍となる6勝目を挙げ、日本最強の座を揺るがないものとしたはずの女王ブエナビスタが、まさかの2着降着。レース入線から確定まで24分間も要し、最終11レースの出走馬がすでに返し馬を始める中、慌しくローズキングダムの表彰式、口取り式が行われた。
武豊、橋口調教師ともに笑顔も見せたが、この心中複雑すぎる勝利に、表情は硬いまま。特に、関西きっての名伯楽・橋口師は共同インタビューの第一声で「何て表現していいものか……後味の悪いレースでした」と、はっきりと口にした。
レースはシンゲンが引っ張るややスローの流れの中、ローズキングダムはスタートから積極的に前の位置を取り、向こう正面でも先行勢を見る好位をキープしていく。武豊が振り返った。
「レース前は元気がないのかと思うくらい、随分と落ち着いていましたけど、道中は手応えが良すぎるくらいの行きっぷりでした。ジャパンカップは毎年そうなんですが、どの馬がどんな競馬をするかつかみにくいので、1コーナーまではある程度前を取る気持ちで、あとは流れを見て決めようと思っていました」
不利なく1コーナーを回るころには、ちょうど目の前に同世代のライバル・エイシンフラッシュがおり、「いい馬の後ろに入れたなと思いましたし、いい形でした」。スタンドからレースを見守った橋口調教師も「菊花賞は今振り返れば位置取りがちょっと後ろだったかなと思っていたので、今回は『よし、よし』と思って見ていましたね」と、ローズキングダム陣営にとっては、まさに理想的な形でレースが進んでいった。
外ブエナビスタ、内ヴィクトワールピサに挟まれる形に
外から豪快に伸びて快勝と思われたブエナビスタ(右)だったが、大きくインへ切れ込みローズキングダム(左・赤帽)の進路をカットしていた 【スポーツナビ】
「4コーナーからいい形で直線を抜けることができましたし、きれいに進路もできていた。“さあ、これから!”という時でしたね」
大外からインに切れながら猛然と襲い掛かってきたスミヨン騎乗のブエナビスタにまず馬体をぶつけられ、内からはギュイヨン騎乗のヴィクトワールピサも急激に外側に張り出してきたため、武豊ローズキングダムはちょうどサンドイッチの形になり、スピードを上げることができない。
ただ、かなりラフな場面だったとはいえ、レース後のJRA裁決委員の説明によれば、ここは降着が課せられるほどのものではなかった。さらに問題が起き、降着の対象となったシーンはこの直後だ。ブエナビスタはここからさらにインへと切れ込み、完全にローズキングダムの前をカット。この度重なる不利で、武豊は何度もブレーキを踏まねばならず、不完全燃焼の2位入線だった。
「直線は本当にいい形でしたし、反応も良かった。『よしっ!』と思う瞬間もありましたから、残念でしたね。内と外から不利を受けて、馬にはかわいそうなレースになってしまいました」