ブエナビスタまさか降着、ローズキングダム執念のJC制覇!

スポーツナビ

ローズキングダムの精神力が手繰り寄せた“運”

運が味方したとはいえ、その運と逆転勝利を引き寄せたのはローズキングダムの折れない精神力だった 【スポーツナビ】

 とはいえ、あの絶望的な直線の攻防から心を折らず、ヴィクトワールピサをゴール寸前でハナ差ねじ伏せ、2位でゴールしたローズキングダムの能力、そして精神力は賞賛されてしかるべき。
 「普段の調教でもこの馬はすごい勝負根性をしているんですが、今回もあんな形のレースでゴール前グンと伸びた。ここでこんな勝負根性を見せてくれたことに驚きましたね。普通の馬だったら、ひるんでしまって4、5着だったと思います」と、橋口調教師も絶賛。トレーナーが語ったように、もし5着に沈んでいたら、たとえブエナビスタが降着になろうとも、ローズキングダムの勝利もなかった。運が味方したとはいえ、この運と勝利を手繰り寄せたのは、誰あろうローズキングダムの頑張りそのものだったのだ。

 昨年12月の2歳王者決定戦・GI朝日杯FS以来、ローズキングダムにとっては待望のGI2勝目。今年はGI日本ダービー、前走のGI菊花賞と2着続きだったため、競馬の神様が1カ月早いクリスマスプレゼントを贈ってくれたのかもしれない。
 やや不本意な形だっただけに、喜びも半減なのか、05年ハーツクライの無念を晴らすJC初勝利にも「確かに大きなレースではありますが、やっぱり気持ちの中ではダービーを勝ちたいですね」と橋口調教師。続けて「今日がダービーだったら良かったのに(笑)」と冗談交じりに語ると、ようやく師らしい大きな笑顔を浮かべた。

 一方の武豊は、落馬の大ケガを乗り越えての23年連続JRA・GI勝利。「勝ちましたから、うれしいです」と胸を張ると、「春は落馬のケガで棒に振ってしまい、秋もいいパートナーに出会うのはなかなか難しいと思っていました。それがこんなに素晴らしい馬に騎乗することができて、その期待に応えたいとずっと思っていたので、今回結果が出たのは本当に良かったですね」と安堵の表情を見せた。

次走は有馬記念へ、今度こそ文句なしのVを

ユタカも約束「次は1位入線ですっきりと勝ちたい!」 【スポーツナビ】

 すっきりしない内容ながらも、JC馬となったローズキングダム。注目の次走について、橋口調教師はきっぱり、12月26日の有馬記念(中山競馬場2500メートル芝)と明言した。
 「今のところレース後も馬は大丈夫なので、胸を張って有馬に行きます。次は正々堂々とみんなに戦ってほしいですね」

 これを伝え聞いた武豊も気持ちは同じだ。
 「マイルでもGIを勝っているし、2400でも3000メートルでも、どんなレースでもきっちりと結果を出してくれる。本当にすごい馬だと思います。今回は2位入線でしたけど、次は1位入線ですっきりと勝ちたいですね」

 結果の上ではローズキングダムに軍配が上がったが、もちろんブエナビスタ陣営も含めた両陣営とも、勝負までも完結したとは思っていないだろう。それはファンも同じ思いだ。1カ月後の中山2500メートル。そこで決着をつけ、真のナンバーワンを今一度問いたい。

GIで1位入線降着は3件目、スミヨンは開催4日間の騎乗停止

ブエナビスタの馬上で派手なガッツポーズ、鞍上スミヨンもまさか降着になるとは思っていなかったか…… 【スポーツナビ】

 喜びを爆発させた歓喜のウイニングランから一転、敗者となってしまった女王。エスコートしたスミヨンも、この結果を予想していなかったに違いない。完全に脚色、勢いは他馬を上回っていたが、ゴール前最後の最後に落とし穴が待っていた。レーススタートから問題のシーンを、スミヨンはこう振り返った。
 「ゲートでややつまずいて後ろからになってしまいましたが、ブエナビスタの力を信じて乗りました。直線は自分の馬が伸びていったときに、内からも馬(ヴィクトワールピサ)が出てきて、空いたスペースに入っていこうとローズキングダムもいっしょに伸びていったので接触してしまったんだと思います。それを妨害と取られたのは残念でした」
 郷に入っては郷に従えとも言うので、と、この裁決を潔く受け入れたが、本心では100%納得できないだろう。ただ、「ブエナビスタの強さは見せられたと思います」と語ったように、レース内容のインパクトでは1馬身3/4差をつけたブエナビスタがローズキングダム以下を圧倒。結果は2着になったが、依然として『最強』の称号はこの五冠女王の頭上にある。
 順調ならば、次走は12月26日のグランプリ有馬記念。仕切り直しの決着戦で、改めて現役最強と年度代表馬の座を射止めるまでだ。

 なお、この走行妨害により、騎乗していたスミヨンは12月4日から12月12日まで開催4日間の騎乗停止。また、同じく最後の直線で外側に斜行してローズキングダムの進路に影響を与えた3着ヴィクトワールピサ騎乗の騎手マキシム・ギュイヨンには、過怠金1万0,000円。さらに、最後の直線コースで十分な間隔がないにも関わらず先行馬を内側から追い抜こうとしたシリュスデゼーグル騎乗の騎手フランク・ブロンデルには、過怠金10万0,000円がそれぞれ課せられた。

 また、JRA・GIレースにおける降着は、今年の天皇賞・秋で15位に入線したジャガーメイル(D・ホワイト騎乗)の18着降着以来で、今年は天皇賞・春、スプリンターズS、天皇賞・秋に続き4件目。
 GIレースの1位入線降着は、1991年の降着制度導入以降、91年天皇賞・秋メジロマックイーン(武豊騎乗)の18着降着、2006年エリザベス女王杯のカワカミプリンセス(本田優騎乗)の12着降着以来の3件目となった。
 なお、ブエナビスタは昨年のGI秋華賞でも、他馬への走行妨害により2位入線から3着に降着している(安藤勝己騎乗)。

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント