長谷川穂積、亡き母に捧げる2階級制覇を

北浦勝広

母に捧げる2階級制覇を――長谷川の視線に先には「勝利」しか見えない 【北浦勝広】

 亡き母に捧げる勝利を――。前WBC世界バンタム級チャンピオン・長谷川穂積が5日、11月26日(名古屋市・日本ガイシホール)のWBC世界フェザー王座決定戦に向け、神戸市内の真正ジムで公開スパーリングを行った。

 「この試合は絶対に勝たないといけない。勝ちたいなぁではなく、勝たなければならない。それが一番の母親孝行になると思います」
 長谷川はそう語り、自身に試練を課した。それが10月24日にガンで亡くなった最愛の母・裕美子さん(享年55)へのはなむけだから。
 「寂しさは消えるわけないんで、こんな短時間で」と、悲しみから完全に立ち直ったわけではない。だが、それでも「寂しいのは変わらないですが、試合は決まってるんで、まずはこの試合に勝つことを今は考えています」とキッパリ、“勝利”の2文字を口にする。

 これまで、ファイトマネーで母親に高度医療を受けてもらい、それが戦うモチベーションの一つであったことに間違いはない。その大きな支えがなくなってしまったが、今は前を向いて戦うだけだ。

飛び級での挑戦に「自信と不安が半々」、勝敗のポイントは「気持ち」

スパーリングでは強打を連発した長谷川(左)、その手でベルトをつかみ取れ! 【北浦勝広】

 この日のスパーリングは自身の戦う意味を確かめるように、3人の相手と計10R。公開スパーリングとは思えないほどで、まるで実戦のような力の入れよう。スパーリングパートナーをぐらつかせる場面も見せた。
 不安がないわけではない。バンタム級から2階級も上げたフェザー級での戦いに「自信と不安が半々。フェザー級で試合はしたことないので」という。さらに「飛び級の無謀なチャレンジ。勝てばいいが、負ければそれなりのリスクも背負う。『負けちゃいました』では終われない」と背水の覚悟も語った長谷川。「人生最大の大切な試合。どの試合よりも落としてはいけない試合だと思う」と話すと、「勝ちたいのみ。ドロドロの判定でも、つまらない試合でも、最後に勝っていればいい」と、とにかく“この試合を勝つ”ことに執念を燃やした。

 対戦相手のファン・カルロス・ブルゴスに関しては「2Rほどビデオを見ました。フェザー級の体格を生かしてくる選手。体格的にも有利な選手ですね」と分析。その上で勝敗を分けるポイントは「気持ち」と言い切った。
 日本人初の『飛び級』での2階級制覇はなるか。そして亡き母に最大の贈り物ができるか。長谷川穂積の新たな挑戦、11.26名古屋で勝負のゴングが鳴る。
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