大宮、過酷な残留争いを乗り切るための条件

土地将靖

激動の10月が大宮にもたらしたもの

新社長に就任した鈴木茂氏。笑顔を見せるも、課題は多く残されている 【写真提供:大宮アルディージャ】

 大宮アルディージャにとって、まさに激動の10月だった。
 10月最初の試合、浦和レッズとのさいたまダービーをきっかけに、公式入場者数の水増しが発覚。実行者2名を解任、渡邉誠吾前代表も引責辞任した。新たにチームOBでもある鈴木茂氏が代表取締役社長として着任。社外からの登用1名を含む2名の取締役が就任し、経営陣を刷新することとなった。

 チームの方に目を向けると成績が上向かない。浦和戦後の天皇杯3回戦こそ、J2大分トリニータを相手に快勝したが、続くガンバ大阪戦では1-5と大敗。約1カ月ぶりのNACK5スタジアムでのホームゲームとなった川崎フロンターレ戦では、序盤での2点のビハインドから食らいついたものの引き分けにとどまった。

 10月に予定されていたリーグ戦4試合の戦績は、1分け2敗と白星なしの勝ち点1。そう、3試合しか消化できていない。激動のとどめは自然のいたずらによるもの。30日、台風14号の関東接近による影響で、湘南ベルマーレ戦が中止・延期となってしまったのだ。湘南といえば、現在はリーグ最下位であり、17節の熊谷での対戦でも完勝している相手。ここでたたいておいて、ラスト6ゲームに向けてはずみをつけるはずだったのだが、台風のおかげで肩透かしを食らった格好になってしまった。

 だが、影響はそれだけではなかった。延期の湘南戦が11月10日に組み込まれたことにより、29節のモンテディオ山形戦から33節のアルビレックス新潟戦まで、天皇杯4回戦を含む7試合すべてを中2〜3日で戦うハードスケジュールとなってしまったのである。季節外れの台風が大宮にとって、とんでもない10月の締めくくりをもたらした。

日程はハードだが、残り試合のカードには恵まれた?

 28節、試合がなくなってしまった大宮を尻目に、残留争いのライバルである山形、ベガルタ仙台、FC東京、ヴィッセル神戸はそろって勝ち点を伸ばした。順位表のすぐ上にいた東北の2チームは、安全圏へ逃げ延びていこうとする。下からは、FC東京に勝ち点で並ばれ、神戸とは勝ち点2差にまで詰められた。状況は予断を許さない。しかし、あれこれ考えたところで順位表の位置は上がらないし、厳しい試合スケジュールも変わることはない。開き直って眼前の敵を倒す。それしかない。

 ポジティブに考えれば、残り試合のカードは恵まれたと言っていいだろう。降格圏に沈む2チーム、京都サンガF.C.と湘南から勝ち点3を奪うことを前提に、直接対決で山形を再び残留争いに引きずり込み、神戸を突き放すチャンスもある。首位を走る名古屋グランパスとの対戦を残しているが、早ければ大宮との対戦で優勝が決まる可能性がある。いくら2位以下を大きく引き離しているとはいえ、初のリーグ制覇がかかる試合となればプレッシャーも感じるだろう。思わぬ結果が転がり込んでくるかもしれない。

 もちろんこうした過程は、いずれも大宮にしっかりとした準備があれば、というのが前提条件だ。疲労を蓄積させないよう体のケアをしっかりと行なうこと。勝ちに浮かれず敗れても引きずることなく、試合ごとに気持ちをきっちり切り替えること。技術・戦術以前に、そうした基本的な部分のメンテナンスが重要になってくる。次の山形戦までが、連戦前最後の“1週間”のインターバルとなる。連戦に入ってしまえば、中2〜3日で大幅な修正・改善を行なうことは難しくなるので、ここで入念な準備をしておかなければならない。

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著者プロフィール

1967年1月28日、埼玉県生まれ。93年、現在のWEB版「J's GOAL」の前身である試合速報テレホンサービス「J's GOAL」にて、試合リポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーランスとなりライターとして本格活動を開始、大宮アルディージャに密着し週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)ほか専門誌等に寄稿している。

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