村上、羽生がドラマチックなシニアデビュー=フィギュアスケートNHK杯
村上佳菜子が観客を惹きつける力
シニアデビューとなったNHK杯で3位に入った村上佳菜子 【坂本清】
まず村上は、ミスのない演技でショートプログラム(以下、SP)2位。フリーではジャンプの転倒3度という不本意な出来ながらも、他の選手もミスを連発したためSPでの貯金が生きて、3位。初のグランプリシリーズで表彰台という快挙となった。
今大会出場の女子選手でただ一人、3回転−3回転を成功、しかもSPとフリーで2回着氷(SPは回転不足判定)するなど、技術面も及第点。しかし、村上を見た人が一番気持ちを動かされたのは、あの若く溌剌(はつらつ)とした、スピード感たっぷりの演技ではないだろうか。
観客を惹きつけた村上のSPでの演技 【坂本清】
実は村上は、すでにジュニアのころから完成された滑りを見せるスケーターで、「果たしてこの選手に、伸びしろはあるのだろうか?」とシニアデビュー前に多くの人々を心配させていた。しかし、ふたを開けてみれば、昨シーズンからジャンプは飛距離が伸び、スケートの幅、一歩一歩も大きくなり、見せる力もさらにパワーアップしている。ジャンプ技術は浅田、安藤といった天才たちに及ばないものの、現在は難度の高いルッツ−トウループの3回転−3回転も身につけつつあるという。世界のトップで戦うために、十分なものは持っているようだ。
世界中で愛される特別なスケーターに
持って生まれたスター性は可能性を感じさせる 【坂本清】
彼女の人を引き付ける力は、氷を降りても消えることはない。大会期間中、報道陣を最も沸かせたのは、フリー翌日の取材中のこと。前日の夜の様子を尋ねられると……。
「昨日は満知子先生たちとご飯を食べながら、反省会をしました。先生こんなんなって(疲れて背もたれに大きく寄りかかるしぐさをしつつ)、『ショック……。佳菜子はできると思ってたのに』なんて言って!」
その、コーチのものまねがあまりに傑作で、大人たちは大爆笑。誰もが山田コーチの「ショック……」の様子をありありと想像してしまったほどだ。
チャーミングで、豪胆。意識をしているのか、していないのか、大人数に囲まれても何も臆(おく)することなく、自然に記者たちを自分の味方に引きつけてしまうスター性。普段から「全然プレッシャーなんか感じていません」などと言い放つ、気持ちの強さ。リンクの中でも外でも彼女は彼女らしく、このまま輝き続けるならば、きっと世界中で愛される特別なスケーターになれるだろう。