早大の14年ぶりVは「ベストメンバーがそろった結果」=出雲駅伝・総括

構成:スポーツナビ

1区から一度もトップを譲らずに優勝を果たした早大は、学生3大駅伝での3冠を目指す 【写真は共同】

 学生3大駅伝の幕開けを告げる第22回出雲全日本大学選抜駅伝競走が11日、出雲大社正面鳥居前から出雲ドーム前までの計44.5キロで行われ、早大が2時間10分05秒で14年ぶり2度目の優勝を果たした。

 全国17大学と国内外の選抜5チームを加えた、計22チームで争われた今大会。“逆転の出雲”とも呼ばれるが、今年は早大が1区で先頭に立つと、一度もトップを譲ることなく、3大駅伝(出雲、全日本、箱根)の初戦を制した。2位には日体大、3位に駒大が入り、この3校が来年のシード権を獲得した。

 元東洋大の監督である川嶋伸次氏に今大会、そして今季の有力校の戦力について語ってもらった。

早大、エース不在が勝因の一つ

14年ぶりに出雲駅伝を制した早大。4区間で区間賞を獲得するなど、チームの総合力が勝利をよんだ 【写真は共同】

 大学駅伝の幕開けを告げる出雲駅伝は、主に1年生などの経験の場ととらえることができます。(来年1月の)箱根駅伝をにらむ意味では「がむしゃらに行く」のではなく、「自分のチームの戦力を確かめる」とともに「周りのチームの状況を探る」大会でもあります。
 各大学、ベストメンバーで戦いたいのはもちろんですが、箱根駅伝の予選会を5日後に控えている日大など、各チームともいろんな事情がありますから、なかなか今大会にぶつけてくるのは難しいです。たとえば、東洋大もエースの柏原竜二(3年)ら主力級のメンバーを使わずに挑んでいましたから。

 そんな中、優勝した早大はベストメンバーをそろえてきました。さらに、いつもの戦い方とは違い、落ち着いていたというのも勝因の一つでしょう。各選手が、自分の持ち場をしっかりと走っていました。今まではエースの存在がいるばかりに、そこに頼っていた。しかし、今季はエース不在のために、各自がしっかりと走りました。

 中でも、3区を走った八木勇樹(3年)がよかったですね。今までは前半はある程度行っても、後半が崩れがちでした。しかし、今回は耐えて耐えて、後半の走りがしっかりできました。メンタル面が弱いとも言われていましたが、それを走って克服した。この走りで、八木は失いかけた自信を取り戻したと思います。実力を持っている選手だけに、各大学にとって、八木は嫌な存在になりそうですね。

 早大が優勝したことにより、各チームが警戒心を持ったと思います。1区(矢澤曜、3年)、3区(八木)、4区(佐々木寛文、2年)、6区(平賀翔太、2年)で区間賞を獲得している上、4区では区間新。各区間ともに、きちっと走っていますからね。とにかく、全区間1位でいけたのは、1区からいい流れができたことに起因するものでしょう。
 渡辺康幸監督の感覚としては、まずは今大会、ベストメンバーをそろえて勝利し、チームが“勝つこと”に慣れることが必要だったのではないでしょうか。

柏原ら主力級選手不在も東洋大、4位入賞

 箱根駅伝で2連覇中の東洋大は4位に入賞しました。エースの柏原や千葉優、大津翔吾、高見諒(いずれも4年)らは出場していませんが、調子が悪いというよりも、出雲のような短い距離より長い距離に適しているということでもあると思います。とはいえ、彼らのような主力級の選手を外しても、上位に入れたのは層の厚さを物語っています。

 特に1年生の設楽啓太、悠太がそれぞれ1区、2区を走り、流れを作ることができたのはよかったと思います。1区の設楽啓は、中盤から先頭を引っ張った山梨学院大のオンディバ・コスマス(3年)の走りについていけませんでしたが、東洋大のように結果を求められるチームで、序盤だけでも先頭に出ることができました。こうした大きな大会でも物怖じすることがなく、ある程度(一区間を)任せることができるのではないかと思わせましたね。箱根でも1区を任せることができるのかなと印象付けた気がします。

駒大の大八木監督にとって、初戦としては満足な結果

 また、優勝候補の一角であった駒大は3位に入りました。前半はもっとトップに食らいついていく走りをしなければいけなかったと思いますが、後半は、優勝に絡むところまで近づきましたので、大八木(弘明)監督にとっては収穫があったといえるでしょう。
 完ぺきではないでしょうけど、大八木監督のよく言う「3番以内」に入ったので、初戦としてはそれなりに満足だったと思います。とはいえ、順位が入れ替わるような優勝争いをしたかったでしょうね。

 一方、明大は1区から16位という致命的な出遅れが8位という最終結果に響いたと思います。あそこまで順位を落としてしまうと、立て直しは難しいですね。

 今大会では早大が最初から最後までトップ守り切る戦いをしましたが、2位以下、5〜7位くらいまで(山梨学院大、東農大、中大)は、混戦状態だったので、各大学ともに今年も力の差が接近していると言えますね。

<了>
■川嶋伸次 / Kawashima Shinji
1966年、東京都出身。日体大時代、箱根駅伝では山下りの6区を担当し区間賞を取るなどチームに貢献。卒業後は旭化成陸上部に入部し、各大会で活躍した。2000年の琵琶湖毎日マラソンで自己ベストとなる2時間9分04秒をマーク(日本人トップの2位)、シドニー五輪マラソン代表に選出された。その翌年に現役を引退、02年からは東洋大陸上競技部の監督に就任するが、08年12月、陸上部員の不祥事により引責辞任する。現在は旭化成に在籍する傍ら、「リスタートランニングクラブ」のアドバイザーや各種講演会、マラソンのゲストランナーとして活躍している。09年8月には自叙伝『監督―挫折と栄光の箱根駅伝』(バジリコ刊)を出版。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント