希望の持てるチームに生まれ変わった神戸=監督交代、J1残留へ向けて
最下位京都に完敗し、降格圏に転落
就任後の初練習で指導する和田新監督(中央)。昨季同様、シーズン途中でチームを引き継いだ 【写真は共同】
では、今季の神戸はどのようにここまで厳しい状況に陥ったのか。シーズン当初からの戦いぶりを振り返りたい。
昨夏から指揮を執ってきた三浦監督がスタートからチーム作りができるということで、今季始動時の期待は大きかった。「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場を目指す」と大きな目標を持ちながらも、昨季と違い、「まずはクラブ最高記録となる一けた順位を目指す」と現実的な目標を掲げた。安定した力でJ1中位以上に定着できるチームになることが期待された。
しかし、現実はそううまくいかなかった。リーグ開幕戦の京都戦こそ2−0と快勝したものの、その後5試合で1分け4敗。たとえ1勝しても、次の試合で再び散々な内容で敗れるという試合が続き、三浦監督が解任となるまでのリーグ22試合での結果は5勝6分け11敗。勝ち点21しか挙げられず、下位に低迷した。
負傷者の続出、戦術面の問題
だからといって、主力がそろっていれば問題がなかったのかというと、そうではない。戦術面にも大きな問題はあった。三浦監督は今季の戦いについて、「プレスをかける方法と、引いて守る方法を使い分けられるようにしたい」と開幕前から繰り返し話していた。だが、実際にピッチで表現されていたのは、自陣に引いてピッチを区切るようにして1人ひとりに与えられたゾーンを守るだけにも見える、古典的なゾーンディフェンス。以前に神戸が得意としていた連動して自分たちから仕掛ける“攻撃的な守備”は消え失せ、自陣深い位置に押し込まれることが当たり前となった。
それにより、ボールを奪えたとしてもその位置は必然的に低くなり、攻撃につなげることが困難になった。今季ここまで、リーグワーストの警告55、退場9(第24節終了時点)という記録を残しているのも、「それは相手についていっている守備だから」(MF吉田孝行)にほかならない。時には前線からプレスをかけてペースを握ることがあったのだが、それがベースにされることはなかった。コンディション面を考慮したことも理解できるが、機能する可能性が高い方法を選択しなかったことには疑問が残る。選手に取材をする中で、「神戸には積極的にボールを奪いにいくサッカーが合っているのではないか」とぶつけた際には、「今は今のやり方があるので……と言葉を選びながらも同調する選手も少なくなかった。それだけに残念だった。
遅かった監督交代
特に多くのチームメートから「神戸の心臓」とまで信頼されてきたボッティを重用しないことには首を傾げるばかり。彼を使うようになって好調の兆しが見えたかと思っても、過去の試合を見ても効果的ではなかったFWの位置での起用が多く、どうしても“攻守別離”の戦いから抜け出すことができなかった。パス出しに物足りなさがあるのではないか、という少々ネガティブな意味をこめて「松岡亮輔とエジミウソンのボランチをどう思うか」と聞いた際の、「あの2人は本当にセカンドボールを拾う」という返答は、前指揮官らしいものだった。
こうした要因があり、結局これといったチームとしての戦い方を構築できなかった神戸は、攻守において中途半端なまま試合を繰り返し、勝ち点を落とし続けた。白星を挙げたとしても、良い流れが続かない。ここまでいまだ連勝なしと、モチベーションの部分でも課題を感じさせた。そして9月5日の天皇杯2回戦では、JFLのMIOびわこ草津相手にもふがいない戦いしかできず辛勝に終わると、リーグ第22節の京都戦では0−3で完敗。ようやくここで、クラブは指揮官の解任を決心した。厳しい状態が以前から続いていただけに、このタイミングでの監督交代は遅かったように思われるが、それでも交代に踏み切ったことは大きかった。