女子ジャンプの最前線で活躍する日本人女性=FISコーディネーター 吉田千賀氏インタビュー

小林幸帆
 女子ジャンプの世界でも、かつての名ジャンパーや名コーチが女子チームのコーチに就任するなど、各国とも本腰を入れ始めている。この春、スキー競技のエリート養成校として名高い、オーストリアにある『シュタームス・スキー学校』を取材で訪問したが、同校の校長は「これからは女子ジャンプに力を入れていかなければならない」と、力を込めて話していたのが印象に残っている。

 それを裏付けるように、吉田さんも女子ジャンプの魅力のひとつとして「今はコンチ杯が最高位の大会ですが、来季からW杯が導入されることでテレビ・メディアからも注目され、より発展していくスポーツなので目が離せない」ということを挙げていた。

2度目となる世界選手権と、その先にある五輪

3月のフライング世界選手権(プラニツァ/スロベニア)での1枚。日本ジャンプチームの一員という吉田さんのもうひとつの顔を見ることができる 【吉田千賀氏提供】

――来季からのW杯開催に選手の反応はどうでしたか?

 選手は喜んでますね。ただ、何百人と選手登録をしている男子はW杯と(その下の)コンチ杯を並行して同時に開催していますが、女子は100人ちょっとと参加人数も多くないので、W杯を何戦か開催して、それ以外はコンチ杯ということになると思います。女子W杯に関しては今まさに話し合っている段階で、9月の委員会までに決めていかなければならないことが山積みという状況ですね。

――今季は女子ジャンプにとって2度目となる世界選手権(オスロ/ノルウェー)もあります

 初参加となったリベレツ大会は良い大会になったとは思いますが、天候に恵まれず選手のパフォーマンスが一段低いものになってしまった。特に若い選手たちにとっては難しい大会だったのではないかと思ってます。トップ10の選手たちはうまく飛べていたんですけどね。このオスロでは団体戦はありませんが、今季のジュニア世界選手権(オテぺ/エストニア)から女子も団体戦が始まるので楽しみですね。

――女子ジャンプで避けて通れない話といえば五輪参加です。バンクーバー五輪前も参加を巡り話題になりましたが?

 バンクーバー五輪に関していえば、IOC(国際五輪委員会)が決めることなので、私たちが何か言っても変わるものではないという状況でした。すでに決定も下されていたので特に介入はしませんでしたね。(2014年の)ソチ(ロシア)に関しては、FISもIOCに追加種目として申請し、力を入れていますので、チャンスはあると思っています。

――最後に今後の目標などを教えてください

 私が見ている限りでは、本当に急成長の競技なんですね。各国、力を入れてきているので、年々選手のレベルや選手数も上がって来ており、大会のレベルなども含めて男子のレベルに近づいていくと思っています。

 W杯参加など大会数も増えていく中で求められているのは、各国スキー連盟の頑張りです。そして、これは急務でもあるんですね。今は、どこも予算が厳しい状況ではありますが、各国スキー連盟には頑張ってもらいたい。

 あとは五輪ですね。いつ実現するかは分かりませんが、必ずいつかは入ってくると思っています。五輪参加の早期実現、そして参加が実現した時にはいいパフォーマンスを見せられるようにしたい。結局なぜ五輪が盛り上がるのかというと、人を感動させられるからですよね。だから、女子ジャンプが参加となった時に人を感動させられるような競技になっているといいな、と思いますね。

女子ジャンプのキーマンに取材を終えて

 周囲からの評価とは裏腹に「まだまだ現場で気持ちの余裕がない」と、こぼす吉田さんだが、女子ジャンプの五輪参加の可能性について話がおよぶと「もちろん選手たちは参加したいでしょう」と言葉に力が入った。日々、多忙な生活を送りながらも「大変だけど楽しい」と言いきり、その表情からは女子ジャンプのキーマンとしての責任感や熱意が強く伝わってくる。日本ではまだまだなじみのうすい競技だが、その中心で活躍する日本人女性がいる――。ひょっとすると、日本は他国よりもずっと、女子ジャンプを身近に感じるチャンスがあるのかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

1975年生まれ。東京都出身。京都大学総合人間学部卒。在学中に留学先のドイツでハイティーン女子から火がついた「スキージャンプブーム」に遭遇。そこに乗っかり、現地観戦の楽しみとドイツ語を覚える。1年半の会社員生活を経て2004 年に再渡独し、まずはサッカーのちにジャンプの取材を始める。2010年に帰国後は、スキーの取材を続けながら通訳翻訳者として修業中。

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