C大阪、昇格1年目のJ1優勝へ=好調の理由、リーグ終盤への課題

小田尚史

J1仕様に一新されたチーム

経験豊富な茂庭の加入で、C大阪の守備は格段に安定感を増した 【写真:アフロ】

 J2からの昇格1年目で、即J1優勝へ。現在、そんな夢物語とも言える偉業への挑戦が可能な3位という好位置につけているセレッソ大阪。先日行われたガンバ大阪との大阪ダービーでは、激戦の末に2−3と敗れ、第16節から続いた連続無敗試合は7でストップしたが、ワールドカップによるリーグ中断前後からの快進撃は目覚ましいものがある。その好調の要因はどこにあるのか。それが、今コラムでのテーマである。

 前提として、今季のチームは主力メンバーが昨季と比べて様変わりした。「昨年の戦力でJ1上位を狙うことは難しい」という現場とフロントの一致した考えにより、オフにJ1経験が豊富な選手を大量に補強。大分トリニータから清武弘嗣、高橋大輔、上本大海の3人、G大阪から家長昭博(2008〜09は大分でプレー)、FC東京から茂庭照幸、ジュビロ磐田から松井謙弥(09年は京都サンガF.C.でプレー) 、そしてG大阪から播戸竜二を獲得した。現在、彼らがチームの主力を成している事実からも、フロントの功績はたたえられるべきである。

 また、元日本代表の肩書きを持つ選手も含む新戦力は、その実力もさることながら、メンタル面でも今季のC大阪にピッタリと符合した。FC東京を戦力外になった茂庭は、「今季に懸ける自分の気持ちと、4年ぶりのJ1に挑むC大阪のチャレンジ精神が一致した。C大阪で再び自分を取り戻すため、C大阪にお世話になることを決めた」と語る。
 外国籍選手に関しては、レヴィー・クルピ監督の人脈により、ブラジル人のアドリアーノ、アマラウといった、世界的には無名ながらも、監督自身の目でチームにフィットすると判断した選手を連れてきた。

 かくして、昨年のメンバーから一新されたチームは、序盤こそ至るところで連係不足に苦しんだが、その後は修正個所を選手間で話し合い、試合を重ねるごとにチームとしての成熟度を深めていった。「個の能力の高い選手たちが、お互いの特長を知ることが大事。同じメンバーで開幕から10試合ほど重ねれば、自然とチームは機能するだろう」という開幕前のクルピ監督の読み通り、第10節の鹿島アントラーズ戦以降、チームはリーグ戦で上昇を続けていくのだから、監督の慧眼(けいがん)には恐れ入る。

躍進の陰に守備の安定あり

 ピッチ内に目を移すと、昨季と比べて大きく違うのが、守備の安定感だ。センターバック(CB)の茂庭、上本大海の活躍なしに、現在の躍進は語れない。というのも、C大阪は攻撃姿勢がチーム全体に染み渡っており、両サイドバック(SB)も高い位置を取って積極的に攻撃参加するため、CBにかかる負担が大きい。彼らの眼前には常に広大なスペースが広がり、相手のカウンターに数的同数の2バックで対処せざる得ない状況もたびたび訪れる。昨季は、その対応にもろさがあった。

 しかし、足が速くカバー範囲の広い彼らは、そんな状況を苦もなく処理していく。特に、1対1に優れた茂庭の安定感は特筆すべきものがあり、今季のパフォーマンスだけを見れば、再び日本代表に招集されても全くおかしくないレベルにある。また、彼がクサビのボールをつぶし、上本が裏をカバーするという2人の役割がハッキリしていることも大きい。役割が逆になっても対処できる融通性も彼らの強みだ。
 さらに現在は、2人が相手のプレーを遅らせている間にボランチがカバーに入り、両SBが中に絞るといった動きもスムーズになりつつある。前線から追い込む守備を含め、全くのゼロからスタートした守備戦術が、試合を重ねるごとに高まりを見せている。

 一方の攻撃はと言えば、前評判とは裏腹に開幕当初は苦しんだ。昨年はJ2を席巻した「3−4−2−1」システムだが、期待された香川真司、乾貴士の2シャドーが徹底マークに苦しみ、彼らをフォローすべき両ウイングバックもJ1では高い位置を取り切れずに押し込まれたのだ。実質5バックの守備的布陣になり、攻撃に移った際の迫力と人数を欠き、1トップ2シャドーが孤立した。

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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