錦織圭が見せた“攻撃的防御”=全米オープンテニス第1日

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全米オープン第1日 2年ぶりに全米オープンのコートに立った錦織。ツキを引き寄せる、冷静なプレーが光った 【Getty Images】

 テニスの四大大会、今季最終戦の全米オープン第1日が現地時間30日、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われた。
 男子シングルスでは、日本男子で唯一本戦に出場した錦織圭(ソニー)が、対戦相手の棄権により初戦を突破。また、世界ランキング2位のロジャー・フェデラー(スイス)が勝利を収めた。
 女子シングルスでは、森田あゆみ(キヤノン)が全仏オープン優勝のフランチェスカ・スキアボーネ(イタリア)にストレートで敗れた。

錦織、2年ぶりの全米コート

 大きな波乱もなく比較的穏やかに過ぎた開幕初日。元女王のディナラ・サフィナ(ロシア)がダニエラ・ハンチュコバ(スロバキア)に敗れたが、サフィナはいつの間にかノーシードで、第24シードのハンチュコバの勝利は“順当”ということになる。力関係は移ろいやすいものだ。

 錦織のこの2年間も大きく揺れた。2年ぶりに立った全米オープンのコート。4回戦に進んだ一昨年の興奮は忘れようもない。ひじの故障から手術、テニスができず、ランキングを失い、そこからまたはい上がってきた。

 ツキにも恵まれたこの初戦は幸先がいい。22歳のエフゲニー・コロレフ(カザフスタン)は、第2セットで錦織が5−2としたところでラケットを地面にたたきつけながらの途中棄権となった。第1セットのタイブレークの後に治療していた右手首の痛みが原因のようだ。棄権が悔しかったのか、プレーの内容が腹立たしかったのか……いずれにしても、世界ランク69位のコロレフをそこまで追い込んだのは錦織の冷静なプレーだった。

メリハリをつけた、巧みなプレー

 錦織にとってコロレフは、初対戦だが、実は嫌なタイプのプレーヤーだったという。

「フラットなショットでラインのギリギリのところにハードヒットしてくる選手なので。でもミスも多いということを聞いていたし、今日は自分から攻めようとあまり思っていなかった。ディフェンス重視になるだろうな、と」

 “エア・ケイ”に象徴されるようなアグレッシブなプレーが錦織らしさだとすると、それをあえて抑えるテニスだった。読み通り、そして作戦通りに試合は展開していく。

「求めていたテニスとは違うけど、今日は相手に合わせていたところもありましたね」。勝ちにいくテニスと「やりたい」テニスは必ずしも一致しないことを、さらりと示した。そこにはジレンマなど微塵(みじん)も感じさせない潔さがある。

 それに、ディフェンス重視とはいえ要所で錦織らしい攻撃も見せた。第1セット、5−6のサービスゲームで攻めに切り替えたという。それがその後のタイブレークに「ガッと入っていけた」という力強い流れを作り、そのタイブレークで1ポイントも与えない結果につながったのだろう。この、流れを読む巧さとメリハリ自在の多彩なプレーが、錦織の行く先により大きな可能性を感じる要素でもある。

 また、タイブレークの勝負はこれで9連勝。タイブレークでは勝負強さに加えてサーブ力がものを言う。「ひじを故障していたときについた悪い癖が抜けていない」と話していたのはウィンブルドンでのことだったが、なお改良を続けるサーブに対しての自信は膨らみ、今や復活ロードのパートナーとなっている。

<了>
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