女子ビーチバレー、五輪への厳しい現状

ビーチバレースタイル

ツアー初優勝を飾った尾崎(左)・金田組。女子ビーチ界は、戦国時代に突入した 【坂本清】

 ビーチバレーJBVツアーの第3戦となる大阪カップ中之島大会女子決勝(18日開催)は、尾崎睦(湘南ベルマーレ)・金田洋世(上越マリンブリーズ)組の初優勝で幕を閉じた。これでツアー第1戦は浦田聖子・西堀健実(ともにフリー)組、第2戦は田中姿子(エコ計画)・溝江明香(産業能率大)組と、ここまで異なるチームが優勝し、日本ビーチバレー女子は戦国時代に突入した。2012年のロンドン五輪に向け、群雄割拠の構図だが、果たして……。

「このままでは厳しい」ロンドン五輪

 「このままでは日本のトップチームは、ロンドンには行くのは難しいと思う」と大会終了後、きっぱりと楠原千秋(フリー)は言い切った。楠原は04年アテネ、続く北京と2大会連続出場を果たしているオリンピアン。今季は、第一線からは退いてはいるが、これまで世界と戦ってきた自分の「経験」を伝えるため、ツアーに出場し続けている。現役では唯一、五輪を知る選手である。大阪カップでは、今季のパートナー・三木庸子(フリー)とともに、ロンドン五輪出場を目指すトップ選手たちを退け、準優勝に輝いた。

 7月18日現在の世界ランキング、日本女子のトップは、浅尾美和・草野歩組(エスワン)の46位。ロンドン五輪の出場権を、ワールドツアーの成績が関係する世界ランキングで得るためには、ランク16位までに入らなければならない。しかし、今シーズンのワールドツアー7戦を終わった段階で本戦に進めたのは、浅尾・草野組の一度のみ。他のペアを含め、日本勢は予選を突破できない状態が続いている。
 今季、日本のトップチームがすべて、パートナーを変更し「ロンドンを狙う」と公言している。しかし国内外ともシーズン開幕から3カ月を過ぎ、発言に内容が伴っているとは言い難い。

国内トップ、各ペアの現在

国内では世界ランクトップの浅尾(写真)・草野組。しかし、国内ツアーで結果を残せていない 【坂本清】

 アジア大会代表の、浦田・西堀組は「内容的にも技術的にも、もっとも安定」(楠原)しており国内第1戦にて優勝を収めたが、その後、同じく代表の田中・溝江ペアに敗れ、第2戦では2位、今大会では3位に甘んじている。ワールドツアーにおいても予選の試合にいまだ勝つことができていない。浦田は「世界との差は大きいが、海外連戦で少しずつ上がっている。その実感はある」と話す。

 日本のトップランカーでありながら、浅尾・草野組は第1戦の3位が最高。残り試合は準決勝にも進めてはいない。草野は「海外の試合では、挑戦する気持ちでガツガツできるけど、国内の試合では負けちゃいけないとプレッシャーがかかる。でも、結果的に言えば、技術力がないから負けるんだと思う」と敗因を分析する。

 今大会、優勝した尾崎・金田組は、他のチームと異なり、軸足を国内に置いている。「国内でナンバーワンでなければ、海外に出て行く意味はない」と話す尾崎は、現状を的確に表現した。「飛び抜けたチームがいないというのは、レベルが高くないということ。アマチュアチームが決勝に残ってしまうのは問題だと思う」と語る。

第2戦で史上最年少の19歳で優勝した溝江(中央)とベテラン田中(右)のペアだが、今大会は5位に終わった 【坂本清】

 第2戦にて優勝した田中・溝江組は、今大会5位に沈み、調子の波は否めない状況。史上最年少19歳で優勝し、アジア大会代表にもなった溝江は、海外連戦の疲れから精彩を欠き、大阪のビーチで涙に暮れた。

 群雄割拠の情勢を見て、楠原は、「世界で勝つために取り組んでいることが明確で、それを試して日本で負けるのは仕方ないと思うけど、実際、勝てていない。ワールドツアーでは最低限、コンスタントに本戦に出場していかなければならない。半年から1年以内に結果を出していかないと……」と真剣なまなざしで現状を見つめる。
 2年後の夏。ロンドン五輪に出場できるのは、世界で24チームのみ。その霞(かす)みがちな遠きゴールに、日本チームはたどり着けるのか。ビーチバレーが正式種目となった1996年アトランタ五輪以降、4大会連続出場を果たしてきた女子ビーチバレー。その灯を絶やさないためにも、今後の日本チームの奮起に期待したい。

<了>

(取材・文/小崎仁久)

ビーチバレースタイル7月号 『水着SHOW〜2010SUMMER〜』

『ビーチバレースタイル』7月号表紙 【写真/ビーチバレースタイル】

 6月25日発売号の特集は、浦田聖子、西堀健実、浅尾美和、草野歩、田中姿子、溝江明香、尾崎睦、金田洋世、駒田順子、周藤玲美ら、トップ選手10人の戦闘ウエアを一挙公開。選手たちが着用する『水着』へのこだわりとは!? 第2特集は、JBVツアー前半戦ハイライト。明暗分かれた開幕戦をもう一度おさらい。これを読めば、各チームの浮き沈みがまるわかり! そのほか、好評連載中の技術指導企画、フィジカルトレーニング論なども掲載。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

2009年4月創刊。国内トップ選手の情報、大会レポート、技術指導、トレーニング論など、ビーチバレーを「見る」「やる」両方の視点から、役立つ情報が満載。雑誌のほかに、ビーチバレースタイルオンラインとして、WEBサイトでも大会速報、大会レポートなど、ビーチバレーに関する報道を行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント