手に入りそうな“攻撃的で楽しいサッカー”=大宮、手応えとともに再スタート
激化する競争、組織を高める個の成長
ボランチの一角として期待がかかる青木 【写真提供:大宮アルディージャ】
それまでレギュラーだった選手も負けるわけにはいかない。右サイドバックでは、嬬恋キャンプ以降、杉山新が再浮上。渡部とのつば競り合いを繰り広げる。センターバックでは坪内秀介が安定感を発揮し、マトも奮起。加えて深谷が復帰し、定数2のポジションに計算できる選手が倍の4名控えることとなった。
中盤では、ボランチ2つの枠を金澤、青木、アン・ヨンハの3選手が争う。サイドハーフも、既存の選手に加え市川がコンバート、ドゥドゥも復調し、そして何より、キャプテン藤本主税が復帰してきた。
さらに新戦力が加わる。かつてFC東京やヴィッセル神戸でプレーし、フランス2部アンジェに所属していた鈴木規郎を完全移籍で獲得。また、元韓国代表のイ・チョンスが嬬恋キャンプよりチームに帯同しており、こちらも周囲からの評価が非常に高い。FWからコンバートされた市川も「サイドハーフはライバルが多いなと思ってたら、そこに移された(笑)。それでもチャンスをもらえるので、生かしていかなきゃな、と思います」とやや苦笑いだ。
健全な競争は健全な成長を生む。藤本も「みんなうまくなってる」と笑みを浮かべる。個の成長が、組織を高めていくのだ。
再開初戦となった14日の川崎フロンターレ戦は、残念ながらスコアレスドローに終わった。お互い決定機で決めきれずに終えた、という見方もできるが、ポジティブにとらえれば、ボールを支配し川崎陣内にも攻め込み、あとは決めるだけ、とも言える。途中出場で約3カ月ぶりの公式戦復帰を果たした藤本も、「今までにない攻撃パターンもあったし、人が動くサッカーができた。外から見てても面白かった」と自チームを評す。
実際には降格圏内からまだ抜け出せていないという事実は確かにある。だが、プレーしている選手が手応えを感じているという現状を、サポーターの方々にはもう少し見守ってほしいと思う。「攻撃的で見ていて楽しいサッカー」――過去、何度も目標に掲げたものが、もう少しで手に入りそうなのだ。
約2週に1回のホームゲーム。ワールドクラスのスケールや緊張感とはまた違った、1年を通じて同じメンバーで戦うことにより生まれるより組織的で、スペクタクルなサッカーをNACK5スタジアム大宮で見られるようになるまでもう少し。今はそこまでの過程を、スタジアムでじっくりと焼き付けていこう。
<了>