「象が踏んでも壊れない」、「100人乗っても大丈夫」。ともに商品の頑丈さをアピールするために用いられた有名なCMのフレーズであるが、これらの言葉がピタリと当てはまりそうな選手がここにいる。

昨季、アーリーエントリーでクボタスピアーズ船橋・東京ベイ（以下、S東京ベイ）に登録され、３月の第11節・埼玉パナソニックワイルドナイツ戦で公式戦デビュー。シーズン終了後は日本代表活動で活躍を見せたプロップの新鋭、為房慶次朗である。代表活動を終えて合流したばかりであるにもかかわらず、開幕戦のトヨタヴェルブリッツ（以下、トヨタV）戦では先発メンバーとして臨む。

「S東京ベイで試合をするのはひさしぶりですが、開幕戦に出られるのはとても楽しみです。しばらくチームから離れていたのに、信頼して（試合に起用して）いただけるのは、とてもうれしいです」

今年５月には男子15人制トレーニングスコッド菅平合宿に参加。その際は「正直、声が掛かるとは思っていなかったので、自分の経験の一つとしてこの合宿を頑張ろうと思っていた」というが、6月にはイングランド代表戦に出場し、その後は宮崎合宿にも参加。今年だけで日本代表では10試合もの実戦経験を積んだ。

「（代表活動では）ずっと走り回っているような“超速ラグビー”を実践してきました。その意識を自分の中に落とし込んで、S東京ベイのラグビーでも生かしていきたいです。昨季よりもレベルアップしたプレーができると思います」

そんな為房の大きな武器はスクラムの最前列を担う強靭な肉体。ラグビーはケガが付きものの競技であるが、５月の男子15人制トレーニングスコッド菅平合宿から11月のイングランド代表戦まで、一度も離脱することなく代表活動を完走してみせた。

「試合で外国人選手を相手にしてきて、フィジカルで負けることはありませんでした。また、僕は柔道をやっていたので、体が柔軟なんです。（ケガをしないのは）その柔軟性も関係していると思います」

『無事是名馬』ならぬ、『無事是名戦車』。トヨタV戦では日本代表で時間を共有した三浦昌悟とも対戦。「絶対に押されたくない。逆に押してやろうと思っています」と言う。王座奪還を目指す今季のS東京ベイ。象に踏まれようが100人乗ろうが壊れないその肉体は、重要なシーズン初戦でいかなる痕跡を残すか。

（藤本かずまさ）