バレー全日本男子・越川優インタビュー イタリア挑戦で「根本の考え方が変わった」

田中夕子

「1本1本に懸ける意識が違う」

セリエAでは、選手たちのプロ意識の強さをあらためて実感した 【坂本清】

――リーグ全体を見て、サーブの威力や質も違っていましたか?

 日本人で世界レベルのサーブを打つのは福澤(達哉)、清水(邦広)、富松(崇彰)、ゴッツ(石島雄介)ぐらいですが、イタリアではコートの6人中4人は世界レベルでした。パドヴァのレギュラーはジャンプサーブを打つ選手とフローターサーブの選手が3人ずつでしたが、ジャンプの3人は1試合平均2本のサービスエースを取っていましたし、多いときには6、7本ありました。フローターの選手も1、2本はエースを取っていましたので、サーブの違いは確かにあると思います。

――その要素は何でしょう?

 パワーや能力ももちろん大きい要素だと思います。でも、一番は気持ちかな。すべてのプレーがそうですが、勝たないとお金をもらえない、いいプレーをしないとお金がもらえないので、1本1本に懸ける意識が違うし、それが一番大きいと思います。極端に言えば、普段からお酒を飲んでいようが、朝帰ってこようが、結果を出せばいい。試合前日の食事にもワインが出るし、「飲むな」とは言われません。結果が出なければ外されるだけですから。

――プロ意識をあらためて見直す機会になった?

 そうですね。でも、僕にとってはありがたかったです。生活環境の違いにストレスもありましたから、リフレッシュしたいときもあれば、休みたいときもある。日本のように規律がしっかりしているのもいいことだけど、その生活だったら自分のプレーはできなかったかもしれません。もともと自分で何でもする方だし、自分のことは自分でする。当たり前のことですよね。そういう意識は前以上に強くなったと思います。

――意識や考え方など、自分が一番変化したと思うことは?

 いっぱいありすぎて困りますね(笑)。周りからどう見られているか分かりませんが、余裕を持ってプレーできていると思います。今は焦る時期ではないし、その必要もないので、今できることをやって自分の中で確認できていればいいかなと。根本の考え方が以前とはだいぶ変わりましたね。自分ができることをするしかないし、全日本の中でもできることが今までより増えていると思うので、思ったことも積極的に言っていこうと思っています。

世界選手権へ向けて

「さらにレベルアップしていきたい」。現在26歳。静かに、強く、その気持ちを持ち続ける 【坂本清】

――今年一番大きな大会である世界選手権はイタリア開催です。初戦はホーム・イタリアが相手です。今年はそれまでの試合数が少ないですが、そのことに対する不安はありませんか?

 試合がないことがどう出るか。プラスになるかもしれないし、マイナスになるかもしれない。しかもそれがどういう大きさで出るか。やってみないと分かりません。プラスにするためには、一人一人の意識を変えるしかないでしょうね。その中で、(代表選考から)落とされる選手は落とされるだろうし、残る選手は残る。誰が残ろうが自分がやることは変わりません。もし僕が落とされたら、それは僕に力がなかった、ほかのメンバーが良かったということだろうから仕方ない。特別にアピールする気や、評価してもらおうという気負いはありません。求められていることをやるしかないと思っています。

――最後にあらためて、個人として、全日本チームとしての今シーズンの目標を教えてください?

 全日本チームとしてはワールドリーグの出場権を取り戻すことと、世界選手権でベスト8以上に入ること。監督も言っていることなので、それがチームとしての目標です。個人としては、まずは全日本のチーム目標を達成するために自分がやれることをやる。全日本シーズンが終わったら、今年もヨーロッパでプレーするつもりなので、さらに経験値を増やしてレベルアップしていきたいです。

<了>

◇プロフィール◇
越川優/Yu Koshikawa
1984年6月30日、石川県生まれ。バレーボール全日本代表候補。岡谷工高(長野)時代からウイングスパイカーとして活躍し、2002年には高校生初の全日本代表入りを果たす。翌年、サントリーサンバーズに入団。チームの優勝に貢献するほか、全日本代表として世界選手権やワールドカップに出場し、その実力とルックスで人気を得た。09年にはイタリアリーグ・セリエA2のパドヴァへ移籍し力を磨く。現在は今秋の世界選手権を視野に、全日本合宿でトレーニングに励んでいる。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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