バレー全日本男子・越川優インタビュー イタリア挑戦で「根本の考え方が変わった」

田中夕子

イタリアで得た“誤算”

全日本の合宿で、サーブレシーブの練習に臨む越川 【坂本清】

――シーズンを終えて、手応えはどれぐらいありますか?

 やりたいと思っていたことを、基本的には全部できたと思っています。

――イタリアへ行く前に、求めていたことは?

 サーブとスパイクはある程度通用するだろうと思っていたので、サーブレシーブをたくさん受けたかった。それが第一ですね。実際にサーブレシーブは試合の中でかなりの本数を取ったので、求めていた形になったと思います。いい意味での誤算はスパイク。求めていたものとは違う結果を得ることができました。

――具体的に教えていただけますか?

 行く前は、高いブロックに対して(1本で決めるためには)、「どう攻めるか」という攻め方を得ようとしていたんです。でも、試合をする中で得られたのは攻め方もそうですが、根本の考え方、つまりブロックの使い方、利用の仕方。「(ブロックが)何枚いても決めにいく」ではなくて、いかにタッチを取るか。いい状態で打ってミスをすることがあっても、ある程度は仕方ないんです。ただ、決定的に違うのは、日本ではトスのミスでも「エースなら勝負しろ」と言われます。でもイタリアはその逆で、無理をせず、相手にチャンスボールを返すだけでもOKという考え方です。無理に打たなくても、つなげばブロックできるかもしれないし、レシーブから切り返しができる。僕は意識的に無理してでもブロックに当てて、(はね返ってきた)そのボールを取るようにしていたので、そこが褒められたし、評価してもらったと思います。

全日本代表では、基礎体力や筋力のトレーニングなど、厳しい課題をこなす 【坂本清】

――以前と比べて、技術面の変化、成長も大きいのでは?

 ブロックへの当て方は確かに変わりました。今参加している全日本の合宿中にも今田(祐介)さんから「優が(ブロックに)当てた球って、下に落ちないよね」と言われて、実はすごくうれしかったんです(笑)。下に落ちなければ自分が取れなくても、誰かが拾える。そういう打ち方をしたいと思ってやってきたので。
 今まではただ当てに行くだけで、どんなボールが返ってくるか分からない状態だったのですが、今はこういう球が返ってくるだろうなと予測して打っています。ゲームで高いブロックを相手に実践できたことで、タイミングと打つ場所、打ち方は変化したと思います。

――では、サーブレシーブに関して意識や技術が変わったと感じる部分は?

 パワーと高さのあるサーブを常に受けていられたというのは、とても大きな経験でした。まず、無理をしなくなりましたね。(イタリアでは)1試合で50〜60本のという数多くのサーブを受けることもあったので、(レシーブが)返らなくても、あれはおれが返せる球じゃないと切り替えるようになりました(笑)。昔、ツマさん(津曲勝利=元全日本代表リベロ)がミスをしても「次、次」と言えるから、「何でそんなに簡単に切り替えられるんですか?」と聞いたことがあるんです。そしたら、「だってあの球、おれには返せないもん」って(笑)。自分も数を取るようになって、やっとその意味が分かりました。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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