W杯に熱狂した米国サポーターの行方=興奮のグループリーグ、落胆の決勝トーナメント

及川彩子

悔やまれる敗北

ドノバン(写真)の活躍もあり決勝トーナメント進出を果たした米国だが、2大会ぶりの8強入りはかなわなかった 【Getty Images】

 2大会ぶりの8強入りを懸けたラウンド16のガーナ戦は、土曜日の午後2時30分開始というこれまた最良な時間から始まった。ニューヨークやワシントンD.C.をはじめとした大都市のバーやレストランには、米国を応援しようという若者が大挙。ビールを片手にテレビを見つめる人々で溢れ返った。

 前半はスピードとフィジカルに勝るガーナに圧倒され、開始早々に得点を許すなど、いいところのなかった米国だったが、後半は逆にガーナにプレッシャーを掛けてPKで同点に追いつくと、その後は何度もチャンスを作ってガーナを脅かした。しかし延長戦に突入すると、パタッと選手の足が止まり、ガーナに得点を許す最悪の展開に終わり、ベスト8進出の夢はついえた。前々から指摘されていた守備力のなさ、そして決定力のなさが大一番でも露呈され、米国の世界での実力値を思い知らされたファンたちは言葉を失った。

「よく頑張った」という声もある一方で、サッカーに詳しい人からは「ベストの戦いではないし、課題を克服できないまま、みっともなく負けた」と厳しい言葉も。グループリーグでの苦しい戦いで疲弊していたこともあり、動きが悪かったことは否めない。大事な一戦での敗北は、ドラマの連続で今までになく盛り上がったサッカー熱に、少々水をさす結果となってしまった。

 選手たちもそれを痛感しているはずだ。「ベスト16では、国民のハートをつかめない」と。サッカー不人気の時代には、“女子のスポーツ”と揶揄(やゆ)されてきた選手たちだからこそ、世界の場で自分たちの実力を試すことができるW杯に懸けていたはずだ。「勝たなければ、認めてもらえない」。スポーツ大国である米国選手たちの持つ宿命、そして悲哀である。

サッカー人気を永続的なものに

 1993年に開幕した国内リーグ、メジャーリーグサッカー(以下、MLS)は今年で17年目を迎えた。昨季の平均観客動員数は1万6120人を記録している。この数字は、米国4大スポーツであるアメリカンフットボール(NFL、6万7508人)、野球(MLB、3万213人)には遠く及ばないものの、バスケット(NBA、1万7149人)、ホッケー(NHL、1万6985人)に迫る数値である。

 今大会中、テレビにかじりついた人の多くが“サッカーファン”というわけではない。「W杯は見るけれど、MLSには興味がない」と話す人も多い。米国人にとって、W杯は五輪と同様、1つのイベントであり、時事ネタとしてチェックしなければならない、といった程度のものなのかもしれない。
 また米国の場合、代表23選手中、MLSでプレーする選手はエースのドノバンを含め、わずか4人。「W杯で活躍した選手を見るために、スタジアムに足を運ぼう!」という状況にならないのが、つらいところだ。しかし、数々のドラマティックな試合を観戦し、サッカーの面白さそのものに目覚めた人も少なからずいるだろう。そういった人々を引きつけるプレーをMLSでも見せれば、徐々にスタジアムに足を運ぶファンも増えるはずだ。
 再び高まったサッカー人気をいかに永続的なものにするか。それは、ファンの心をとらえる選手たちのプレーや自覚に懸かっている。

<了>

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著者プロフィール

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

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