W杯に熱狂した米国サポーターの行方=興奮のグループリーグ、落胆の決勝トーナメント
ドラマの連続で注目度がアップ!
ラウンド16でガーナに敗れ、米国の南アフリカでの戦いは終わった 【ロイター】
グループリーグでは、イングランド、アルジェリア、スロベニアと同居した米国。12日に行われた初戦のイングランド戦は米国東部時間の午後2時30分キックオフ。土曜日ということもあって、試合観戦にはベストな時間だった。そのためサッカー好きの多くの若者たちがスポーツバーに繰り出し、大声援を送った。試合は相手GKのミスにも助けられ、強豪に1−1と引き分けを演じ、サッカーファン以外の注目も集めた。米国選手の必死の戦いぶり、そして「何が起こるか分からない」スポーツでもあるサッカーの魅力に引き込まれた人々も多かった。
ちなみに米国東海岸と南アフリカの時差は6時間(西海岸は9時間)で、今大会のグループリーグにおける開始時間は第1試合が午前7時30分、第2試合は午前10時、第3試合は午後2時30分と、ビジネスマンにとってはテレビ観戦が難しい時間帯。長く続く不況のため、仕事をさぼってスポーツバーにもぐりこみテレビ観戦をするなどということもできず、イライラしながら職場のインターネットで結果をチェックする人も多かった。しかし、米国の初戦が週末に重なったことで、ファンはもちろん、お祭り好きの若者ら新たなファンを獲得することができた。
不可解な判定 劇的な勝利
勝ち点3を逃した米国にとっては厳しい状況に追い込まれたが、この“幻のゴール”が米国人の愛国心に火をつけた。
「勝った試合なのに」
「ビデオ判定をすればいいのに」
「米国に対する嫌がらせだ」
普段、全くサッカーに興味を持たない人たちも、翌日は“幻の3点目”談義に花を咲かせた。しかし、サッカー大国ではないため、暴動に発展するとか、怒りの矛先をどこかに向けるなどといった暴力的な事件には至らず、「次に勝てばいいから、まあ、いいか」というムードが漂っていたのは、やはり米国ならではと言えよう(※その後、FIFA=国際サッカー連盟=が事情聴取を行い、主審を務めたマリ出身のコマン・クリバリ氏はこの試合以降、グラウンドに立つことを許されない、つまり大会から追放され、この判定が「重大な誤審」だったことが暗に発表された)。
決勝トーナメント進出が懸かったアルジェリア戦では、互角に戦いながらも、得点を奪うことができない時間帯が続いた。わずかなチャンスから放ったシュートは不運にもオフサイドとなった。同時刻に開始されたイングランド対スロベニア戦では、イングランドが前半にゴールを決めたため、米国は引き分けても決勝トーナメントに進出できない絶体絶命の状況に陥った。
前回大会に続きグループリーグでの敗退が濃厚となり、応援するファンの目にも悲しみと無念の表情が出てきた後半のロスタイム、“ミラクル”が起きた。FWのデンプシーのシュートをGKがこぼしたところを、走り込んだドノバンが押し込み、待ちに待ったゴールを挙げると、スポーツバーはもちろん、テレビやネットで観戦していた米国人たちから「オーーーー!」という大歓声が上がった。ロスタイムでのミラクルゴールに、皆、酔いしれた。