モリーニョの新たなる挑戦=レアル・マドリーでインテルの再現なるか
欧州制覇の歓喜と別れ
インテルを率いて今季3冠を達成したモリーニョ監督 【Getty Images】
インテルは5月22日、チャンピオンズリーグ(CL)決勝でバイエルンを2−0で破り、セリエA、コッパ・イタリアと合わせて今シーズン3冠を達成した。モリーニョにとっては2度目の欧州制覇。しかも、来季の“仕事場”となるレアル・マドリーの本拠地、サンチャゴ・ベルナベウが舞台だったのだから、つくづくこの男の強運を思わずにはいられない。
会長のマッシモ・モラッティは、クラブ史上初の3冠、そして45年ぶりの欧州王者という至福の瞬間を味わい、モリーニョと抱擁を交わした。だが、2004年にモリーニョがFCポルトを欧州チャンピオンに導いた時、既に彼の運命がチェルシーに定まっていたように、今度も優勝を決めたその日、指揮官は栄冠を置き土産にインテルを去ることを表明。その前から「イタリアはわたしの“家”ではない。くつろぐことができない」と語るなど、インテルとモリーニョの関係は終えんを迎えていた。
モリーニョがイタリアのファンに別れを告げる前から、マドリーのメディアは、ポルトガル人指揮官のレアル・マドリー監督就任が秒読み段階である、しかも「年俸1000万ユーロ(約11億3000万円)の4年契約」と詳細までをも書き立てた。“白い巨人”はシーズン開幕前に2億5000万ユーロ(約342億円=当時)もの巨額を投じて第二次銀河系軍団を作り上げたが、結局はまたしても無冠に終わっていた。
そしてCL決勝から4日後、レアル・マドリー会長のフロレンティーノ・ペレスは、マヌエル・ペジェグリーニを1年で解任し、モリーニョを新監督として招へいすることを発表したのだった(28日には、レアル・マドリーがインテルへ補償金を支払うことで両クラブが合意)。
通訳から偉大なる監督へ
永遠のライバル、バルセロナの本拠地カンプ・ノウで「通訳、通訳」と皮肉な呼び掛けを浴びようとも、モリーニョにとっては重要なことではないだろう。実際、1996年にボビー・ロブソンがバルセロナの監督に就任した時、モリーニョは通訳を務めており、その後アシスタントコーチとして指揮官を支えた。彼の仕事はスカウティングで、ライバルの戦術をリポートしていた。その出来は秀逸で、その後書籍として出版されたほどだ。
そのモリーニョが、来季はレアル・マドリーの監督としてベンチに座ることになる。今季のCL決勝では、97年〜2000年までバルセロナを率い(02−03シーズンも監督に就任するが、シーズン途中で解任)、現在はバイエルンの監督を務めるルイス・ファン・ハールと対峙(たいじ)した。そのオランダ人指揮官をして、かつてのアシスタントコーチについて「モリーニョがこれほど偉大な監督になるとは思わなかった」と言わしめたのだ。