19歳の溝江が最年少V ツアー参戦2年目の栄冠=ビーチバレー

ビーチバレースタイル

ビーチバレーのツアー第2戦で田中・溝江組が初優勝。今季注目の期待の若手、溝江明香(写真)に迫る 【坂本清】

 ビーチバレーのJBVツアー第2戦大日本印章オープン最終日が16日、愛知県知多市新舞子マリンパークブルーサンビーチで開催され、女子決勝では田中姿子(エコ計画)・溝江明香(産業能率大)組が浦田聖子・西堀健実(ともにフリー)組を2−0で下し初優勝に輝いた。

 弱冠19歳の溝江は、浅尾美和(エスワン)が持っていた記録に並ぶ、最年少でのベスト4入りを果たして決勝進出を決めた。さらに、決勝の舞台では、草野歩(エスワン)の持つ24歳の最年少優勝記録を大幅に更新。大器の片りんを感じさせる新星が、ビーチバレー界に現れた。

田中は「一番伸びしろのある選手」と評価

34歳・田中(右)が19歳・溝江にいう直々にオファーをして“15歳差ペア”の誕生となった 【坂本清】

 溝江がビーチバレーを始めたのは、都立駒場高3年の夏のこと。「軽い気持ちでやってみた」(溝江)結果、マドンナカップ(高校女子選手権)で優勝した。溝江は、「当時はまだビーチバレーがどんな世界なのか分からなかったし、自分がどこまでできるかも、分からなかった。関東大学1部リーグからの誘いもあったし、ビーチバレーとインドアバレー、どちらをやるか迷っていた」と振り返る。
 だが、身長175センチという高さを武器に、高校生ながら強烈なスパイクとジャンプサーブを繰り出す未完の大器を、関係者が放っておくはずがない。「2016年のリオ五輪でメダル獲得をにらみ、8年計画で強化しようと思った」という川合庶氏(産業能率大ビーチバレー部監督)から熱心な誘いを受け、溝江は産業能率大への入学を決意した。

 当初は、ビーチバレーとインドアバレーの競技性の違いに苦労した。「組織的に行うインドアバレーと違って、ビーチバレーはベンチに監督がいないので、自分で責任を取らないといけない。自分の意見をしっかり持ってパートナーに主張していかなければいけないので、そこが一番大変だった。今までの自分は甘かった」と溝江。授業の合間を縫いながら、国際大会でも使用可能な広さ、ナイターも完備している湘南キャンパスの敷地内に創設されたビーチバレーコートで、日々トレーニングに励んで来た。

 昨季は、ビーチバレーに転向したばかりの菅山かおる(WINDS)のパートナーに抜擢されるなど注目を集め、2年目の今季は、「前々からペアを組みたいと思っていた」(溝江)という田中から直々にオファーを受け、ペアを結成することになった。
 ベテランの田中は、年の差15歳となる若きパートナー・溝江について、「『若さ』と『可能性』にひかれて、ペアを組みたいと思った。日本では考えられないけど、世界の強豪といわれるチームは、10代後半からワールドツアーに参戦している。溝江は国際大会もある程度経験しているし、ブロッカーとしても高さがあるし、一番伸びしろのある選手」と評価する。

開幕戦での敗戦が2戦目で実を結んだ

開幕戦で敗れた浦田・西堀組と決勝で対戦した田中・溝江組。2−0(21−18、21−19)のストレート勝ちを収めた 【坂本清】

 そして迎えたシーズン開幕戦となる東京オープン。田中の言う溝江の「伸びしろ」は、今季のJBVツアーにおいても、如実に現れた。
「ベテランと組んだ以上、狙われるのは自分」という溝江の予想どおり、開幕戦はサーブで狙われ続け、ディフェンス面でも、「ブロックの周辺にボールを落とされ、それを拾えずに悔しい思いをした」(溝江)と弱点を露呈。敗者復活2回戦で浦田・西堀組に敗戦し、5位に沈んだ。
 だがこの敗戦が、溝江の闘争心に火をつけた。第2戦となる今大会の決勝戦の相手は、宿敵の浦田・西堀組。浦田・西堀組のジャンプフローターサーブが、またしても溝江に襲いかかるが、決して乱されることなく強気のスパイクを決めていき、第1セットは21−18と先取する。続く第2セットは中盤までリードを奪われるが、「開幕戦で浮上した課題を意識して、練習に取り組んできた」という溝江が相手の攻撃を読み当て、勝負所でレシーブを成功。リズムに乗った田中・溝江組が、5連続得点で追い上げるなど21−19で第2セットも連取し、大一番となる舞台でリベンジを果たした。

 ツアー参戦2年目でつかんだ初の栄冠。今まで誰も成し遂げたことがないことをやり遂げた溝江は、「すごくうれしい。姿子さんに引っ張ってもらっていい試合ができた。これからもっと強くなって進化していきたい」と喜びを爆発させた。
 田中・溝江組は、田中のこれまでの実績、溝江の将来性をにらみ、日本バレーボール協会が遠征費をサポートする強化指定Bに選出された。今季は、ワールドツアーなど国際大会を転戦し、世界の強豪に挑むことになる。
 溝江は、「日本のトップチームとして、世界でも一戦一戦勝っていきたいが、まだ自分は五輪出場をかなえられるようなレベルには到達していない。これから姿子さんと一緒に、チームのレベルを引き上げていきたい」とコメント。初の代表入りに慢心することなく、目の前の試合を一つずつ勝利していくことを誓った。確かなる一歩を踏み出した『未完の大器』の成長が今から楽しみだ。

<了>

ビーチバレースタイル5月号 『特集チェンジ〜いま改革のとき〜』

 5月1日発売号の特集は、浅尾美和・草野歩ペア、浦田聖子・西堀健実ペア、尾崎睦・金田洋世ペア、白鳥勝浩・朝日健太郎ペア、畑信也・今井啓介ペア、井上真弥・長谷川徳海ペアら、注目ペアの対談インタビュー。第2特集は、今ブームを呼んでいる『4人制ビーチバレー』の魅力と勝つための鉄則にクローズアップしました。そのほか、好評連載中の技術指導企画、フィジカルトレーニング論なども掲載。
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著者プロフィール

2009年4月創刊。国内トップ選手の情報、大会レポート、技術指導、トレーニング論など、ビーチバレーを「見る」「やる」両方の視点から、役立つ情報が満載。雑誌のほかに、ビーチバレースタイルオンラインとして、WEBサイトでも大会速報、大会レポートなど、ビーチバレーに関する報道を行っている。

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