「3度目の成人式」を迎えた天龍が3度目の旗揚げ戦 「明るく、楽しく、激しい」プロレスに観客が熱狂

高木裕美

超満員の観客を熱狂させ、旗揚げ戦を大成功させた天龍 【高木裕美】

 今年2月に「3度目の成人式」となる還暦を迎えた“ミスタープロレス”天龍源一郎がプロデュースする「天龍プロジェクト」旗揚げ興行が19日、東京・新宿FACEで行われ、超満員札止めとなる550人を動員。
 試合開始前の挨拶で「師匠であった馬場さんの教えである“明るく、激しく、楽しいプロレス”をこのリングで継続していきたい」と意気込みを語った通り、男女混合のミックスドタッグマッチや3WAYマッチなどバラエティーに富んだカード編成に、超満員の観客が熱狂した。
 天龍は大相撲の世界から76年に全日本プロレスに入門し、故ジャイアント馬場さんの指導の元、「全日本第三の男」として活躍。その後、90年に全日本を退団してSWSを旗揚げすると、92年にWARを設立。その後、フリーを経て06年からハッスルに参戦。昨年、ハッスルが崩壊したことにより、新たに「天龍プロジェクト」を立ち上げることとなった。

 天龍はメーンイベントで高木三四郎と組んで、嵐、ディック東郷組と対戦。全日本プロレス時代から因縁の深い嵐と対角コーナーで向かい合うと、序盤から強烈な逆水平チョップを打ち込み、10分過ぎにはグーパンチ&チョップも炸裂。さらに東郷にスパイダージャーマンを決めるが、嵐がカットに入った際に左ヒザを痛めるアクシデントが発生してしまう。
 天龍はヒザを引きずりながらも、嵐のイス攻撃、東郷のダイビングセントーンなどの猛攻を踏ん張ってこらえると、気迫のこもった、ラリアット、53歳などを繰り出し、延髄斬りからの投げ捨て式パワーボムで東郷に勝利した。

 試合後、リング上から嵐に向かって「今日は勝ちはしたけど、こんなもんじゃ満足しない」と呼びかけた天龍は、次回大会となる6.9新宿大会の開催の発表と、封印しているWAR6人タッグ王座の復活を予告。最後は観客と共に「エイエイオー」の勝どきを上げて大会を締めた。
 90年のSWS(10.18&19横浜アリーナ)、92年のWAR(7.14後楽園ホール)に続き、これが3度目の旗揚げ戦となる天龍は「前のように背負っているものはない」と気負いを捨て、あくまでも自分らしいカラーを出していくことにこだわった上で、「まだいい選手はたくさんいるし、今後もこのプロジェクトを続けていく上で楽しみができた」と、今後もWARにゆかりの深い選手、目をかけている実力派の選手をこのリングに上げていきたいと語った。

望月がIJジュニア王座を再戴冠

3WAYマッチを制し、IJジュニアのベルトを再び腰に巻いた望月 【高木裕美】

 セミファイナルで行われたWAR認定インターナショナルジュニアヘビー級王座(IJジュニア)決定戦では、DRAGON GATEの望月成晃、横須賀享、谷嵜なおきが3WAYマッチで激突。前王者である望月が再び王座に返り咲いた。
 かつてWARにレギュラー参戦していた望月は06年7月に行われたWAR最終興行でペンタゴン・ブラックにIJジュニア王座を奪われるも、海外まで追いかけて奪い返すと、そのベルトを封印。しかし、今回、「天龍プロジェクト」スタートにあたり、同王座も復活することとなった。

 DRAGON GATEではベテラン軍の一員としてオープン・ザ・トライアングルゲート王座を保持し、5.13後楽園大会ではオープン・ザ・ドリームゲート王座挑戦も決定するなど、団体の中核として活躍する望月は、「オレが獲らずに誰が獲る」という意気込みの元、開始早々から2人に鋭い蹴りをブチ込み、気合をアピール。谷嵜の首4の字固め&横須賀の足4の字固めによるダブル攻撃や、横須賀のジャンボの勝ち! とミドルキックの相打ちなどで左足に深いダメージを負いながらも、谷嵜のインプラント、横須賀の雪崩式横須賀カッターなどといったフィニッシュ級の技をしのぐと、まずは横須賀を三角蹴りでダウンさせる間に、谷嵜にドラゴンスープレックス、ニールキック、ツイスターとたたみかけて3カウントを奪い取った。

 試合後、ベルトを再び腰に巻いた望月の元にHIROKI、プロモジェル、ブラックシャドー、タイガーシャークの4人が次々と駆けつけ、口々に次期挑戦者に名乗りを上げるも、望月は冷静に「おまえらは誰だ」と1人1人の名前と顔を確認した上で言い分を聞き入れ、タイトル実行委員長の百田光雄が次回6.9新宿大会で挑戦者決定戦を行うことを発表した。
 一度はこのベルトを封印しながらも、強い覚悟の元で再び復活させた望月は「このベルトはオレが墓場まで持っていく。誰の挑戦でも受ける」と、誰が挑戦してきても、死ぬまで守り抜くことを宣言した。

「6時半の男」百田が折原に快勝

折原を破り、息子・力さんの前でマイクアピールをする百田 【高木裕美】

 第1試合では“6時半の男”百田光雄が、かつての全日本の後輩であった折原昌夫と対戦。昨年プロレスリイング・ノアを退団後、約10カ月ぶりの試合にもかかわらず、60歳という年齢とブランクを感じさせない動きで折原のラフファイトを耐え抜き、バックドロップ2発で貫禄勝ちを収めた。
 百田はプロレスの祖・力道山の息子であり、全日本マットでは第1試合で新人の教育係を務めていたことから「6時半の男」の異名を獲得。新人時代にさんざん百田と対戦してきた折原は、今のスタイルであるヒール道を貫き、場外戦や鉄柱攻撃、ストンピング、ニードロップ、顔面踏みつけ攻撃、チョークスリーパー、エルボードロップなどを繰り出すも、百田もパイルドライバー、丸め込みなどで対抗。2発目のバックドロップで勝利した。

 セコンドに就いた28歳の長男・力(ちから)さんの前で父親の威厳を見せ付け、「力道山三世」としてプロレスデビューを目指す息子にパワーを与えた百田は、引退するまでせいいっぱい炎を燃やします」と、早ければ年内にも予定している引退試合に向け、まだまだ戦い続けることをアピールした。

■「天龍PROJECT」4月19日(月)東京・新宿FACE

<メーンイベント>
○天龍源一郎(天龍PROJECT)、高木三四郎(DDT)
(20分3秒 パワーボム→片エビ固め)
嵐(ドラディション)、●ディック東郷

<セミファイナル「WAR認定インターナショナルジュニアヘビー級王座決定戦3WAYマッチ」>
○望月成晃(DRAGON GATE)
横須賀享(DRAGON GATE)
●谷嵜なおき(DRAGON GATE)
(22分13秒 ツイスター→片エビ固め)

<第3試合>
井上京子(NEO)、○澤 宗紀(バトラーツ)
(14分33秒 お卍固め)
豊田真奈美(フリー)、●矢野啓太(バトラーツ)

<第2試合>
○ベアー福田(フリー)
(8分54秒 プルプルベアー→片エビ固め)
●チャンゴ

<第1試合>
○百田光雄(フリー)
(9分15秒 バックドロップ→体固め)
●折原昌夫(メビウス)
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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