異端児キャッチャーの覚悟 「ひとりでチームを変えるつもりでやる」=阪神・城島健司インタビュー

論スポ

僕がすることが何か刺激になればいい

5年ぶりに日本球界に復帰した阪神・城島健司が現在の思いを語った 【黒田史夫】

――ここまでに感じた阪神というチームを語っていただきたいのですが?

 まずね。思うけどね。たった12、13日でタイガースを語れというのはメディアが焦り過ぎ。分かるはずがない。例えば、あなたの会社はどうです? たった12日間通っただけで、この会社はどうですかと聞かれてなんて答えます?

――確かに答えにくい

 なんとも言えないでしょう。僕も一緒。言えないし分かんない。周りが、とにかくバタバタ、バタバタしている。たった僕ひとりが入ったくらいでね、ひとりが入ったことで刺激を与えることはできるかもしれないし、もちろん、ひとりでチームを変えさせるつもりではやりますけどね。でもタイガースは伝統のあるチームなんですからね。逆にそれくらいで変わってもらっても困るでしょう。OBの人たちもそうでしょう。(金本知憲みたいに)移籍して中心になった選手はたくさんいるし、それは必要でしょうけどね。

――しかし、城島選手は、すでに強烈な刺激をチームに与えています。

 城島さんは違うんだなと感じてくれればいいんです。朝からウエートをしたり、それがひとつの練習方法かなと思って取り入れてくれたらいいし、ピッチャーとキャッチャーが喋ることが、いかに大事なことかを分かってくれればいい。そういうものが何か刺激になればいい。僕が、意識して、こうするから、チームがこうなってくれると思ったことは一度もない。僕はいちプレイヤーで、そこまで周りに気をつかっている時間がないんです。自分のことで精一杯ですよ。プロなんて自分の技術で勝負しているんだからね。そこまで余裕がある選手がいるならうらやましい。そうはなりたいとは思うけれど、僕は、まだ、そんな選手じゃない。

「やっぱり時間が足りなかった」なんて言えない

キャンプ、オープン戦と好調を維持し、阪神へ新たな刺激を与えている 【黒田史夫】

――キャッチャーというポジションは、新しいチームに入るとやることが多いです。時間が足らないのじゃありませんか?

 キャッチャーにとっては、打ったり、投げたりもそうですが、ゼロから行くわけですから監督、コーチ、ピッチャー、野手の人たちに自分も知ってもらわねばならないし、僕もいろんなところでどんな人なのかを吸収しなければなりません。そこは慌てなくてはなりませんよね。しかし、WBC(2009年3月)でも、たった15日間でピッチャーを把握しなければなりませんでした。僕らはプロなんでね。後々になって「やっぱり時間が足りなかった」なんて口が裂けても言えないじゃないですか。決してバタバタすることなく、少しずつ上に上がっていくだけですからね。

――阪神には長年マスクを被ってきた矢野燿大(「輝弘」から登録名変更)というライバルがチーム内にいます。

 阪神というチームで矢野さんが何年マスクをかぶったか分からないけれど、今の1年目の自分と矢野さんを比べたら、矢野さんの方が、いっぱい経験しているかもしれない。多分そうでしょう。でも、矢野さんだって移籍してきた1年目は僕と同じ時代があったわけでしょう。それを乗り越えて今の矢野さんの地位がある。僕のソフトバンク時代もそう。マリナーズの時代もそう。いきなり矢野さんもプロ20年目からスタートしたわけではなくゼロがあったんですから。それより僕はもっと早いペースで成長すればいいんです。矢野さんはリスペクトして競争していかねばならない相手ですからね。

真弓監督やコーチをガッカリさせることはできない

――意識して取り組んでいることはありますか?

 守りも打つ方もそうだけど、フォークへの対応ですね。日本ではフォーク全盛だけど、向こうはフォークではなくチェンジアップ。日本ではチェンジアップを投げる投手が少ないのでアジャストするのが難しかったですよ。スローに移る動作もね。でも、4年でチェンジアップを捕ることは当たり前にできるようになった。今度はフォーク。フォークの取り方というかミットの持って行き方が変わってくる。ボールを前に落とすには下半身、骨盤の動きがきっちりついていかないと対応できない。4年前に自然とできていた動きを思い出さないとね。

――自主トレから現在のアーリワークでも続けている体幹のトレーニングは、そのあたりを考えた準備なんですね。

 バッティングもそう。向こうではフォークを投げるピッチャーがいないんでね。でも、自分で調整を任してもらっているので試合が始まって「5年ぶりなのでフォークは捕れません。フォークは打てません」は、プロとしてできない。任せてくれている真弓監督やコーチをガッカリさせることはできないんです。

――阪神に今季勝てるポテンシャルはありますか?

 ポテンシャルはあるでしょう。というかメディアの前で「ない」とは言えないでしょう。タイガースは人気があるチームだから僕の口が災いするか分からないけれど、さすがになくても、あるというからね(笑)。そういう質問はしないほうがいい。答えが「イエス」しかないなら僕の色は出ない(笑)。

※論スポ掲載記事より一部抜粋

<写真=黒田史夫 聞き手=論スポ編集長 本郷陽一>

総合スポーツ雑誌「RONSPO(論スポ)」

「RONSPO(論スポ!)」Vol.6号は3月12日発売 【論スポ】

 スポーツの議論を深めようという季刊のコンセプトマガジン「RONSPO(論スポ!)」Vol.6号(定価880円)が、全国書店、コンビニで3月12日に発売となります。今回のテーマは「プロ野球開幕特集/ベースボール維新力」。開幕に向けて今季革命を起こしような選手にスポットを当てて連続インタビュー。雄星、城島、マー君、松井秀喜らの思考が明らかになっています。また24ページの特別企画として与田剛&アキ猪瀬責任監修のMLB全30チームガイドも掲載。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント